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人生は冥土までの暇潰し

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人生は冥土までの暇潰し
亀さんは政治や歴史を主テーマにしたブログを開設しているんだけど、面白くないのか読んでくれる地元の親戚や知人はゼロ。そこで、身近な話題を主テーマに、熊さん八っつぁん的なブログを開設してみた…。
東光ばさら対談 戸川昌子
亀さんは本来、ジェントルマン(紳士)なんだが、朱に交わればくなるという諺があるように、歯科&音楽ウォッチャーさんと長く付き合っているうちに、亀さんまでスケベニンゲンになってしまったワイ…(爆)。

それはともかく、先ほど歯科&音楽ウォッチャーさんのメールを、「洞察歯観のすすめ(4)」で紹介した。その勢いに乗って、もう一本スケベ記事を取り上げよう。人間、たまには息抜きも必要なことだし、ゆっくりと週末を愉しんでくれ……。

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レベル低くてやってられねえ
今 ずいぶん元気だねえ、おめえは……。

戸川 先生もお元気そうで。

今 七十六キロあったのが、いま四十五、六キロまで痩せたよ。

戸川 病気でいらしたんだし、しようがないですよ。

今 いまは、もっばらハイティーン相手だ(笑い)。

戸川 先生とは何回か講演旅行をご一緒させてもらいましたけれど、車の中、汽車の中、全部ひどい話。ためになりました……(笑い)。「オィ、マーちゃん、おめえ、オレのさわってみろ」って。ダンスしていても、オレのはすごいって聞かされましたね。

今 オレ、さわられたか……(笑い)。

戸川 だって品定めですもの。

今 ……。

戸川 でも猥談はの話し方っていうのはこんなに面白いものであるという、いい勉強をさせてもらいました。

今 しばらく一緒に行かないね。

戸川 もう五年になるかしら。

今 帯しめてやったな。

戸川 ええ。いつも講演の前にね。先生、お上手でした。

今 講演といえばな、オレはもう、来年は選挙に出ないからな。もう、やめた。バカあ相手にしちゃいられねえ。

戸川 やっばり……そうなるだろうと思ってた。

今 オレ、この頃、憎まれたり嫌われたりしてるだろ。

戸川 昔ッからじゃない(笑い)。

今 いや……。自民党で体質改善問題が出てたから、オレ言ったんだよ。もう七十以上の議員は自発的にやめるべし、そういう者を公認することは間違いだとね。

戸川 若い人にもひどいのがいるけど、からだ動くだけいいか……。

今 うん。まだ若いほうがいいからって、オレ、議員会館で言い出しコキベエで言ったんだよ。

戸川 (笑い)。

今 実際はね、次の参院選の〝当選確実〟ってのを選ぶとすると、いの一番にオレじゃアねえか。ところがオレはもう、率先して出ないんだから七十以上のクソったれじじいはやめろッて言ったところが、さアー、じじいがみんな頭にきちゃって、さる日、七十以上が三十三人集まったんだよ。

戸川 ヘェー!? そんなにいますかねえ。

今 もっといるんだよ。で、今のクソったれ野郎がああいうことを言うけれど、われわれはあくまで出ようって決議をしたらしい。だけど、その中で、オレの見たところ、十人は落ちるよ。それで、こんどバカどもが当選確実らしいっていうんで、春日八郎とか三波春夫とか。山東昭子とかいうのを打診しているらしいんだ。参議院じゃなくて芸能院だよ。

戸川 だいたいねえ、先生、タレント議員もいいけれど、またその応援演説もほとんどタレントだというような、おかしな風潮でしょう。タレントの名前にくわれて、出る議員がだれだかわからないっていうことが多かった。なんというバカバカしさかしら。

今 タレントの話だけ聞いて、議員が出るとみんな帰っちゃうんだ。それは悲惨なもんだぜ。バカバカしくて、そんな奴と同席できないよ……オレはもう。

戸川 でもね、先生。おそまつな議員の話を聞く私たちのほうが切ないわよ。教育問題だ何だかんだって、その時は当選したいばかりに熱くなって吠え立てても、ちっとも改善されないような気がするわ。

今 だから、オレ来年出ないよ。

戸川 人の顔色見てしゃべったり、行動したり出来ない。まずこれで失格ですよ(笑い)。気に入らなきゃ棒でぶん殴る。だいたい「お願いします」なんて一言もいえないでしょ。バカヤロー、てめえ、コンチクショウって大悪口を言いながら票を集める。だから規格はずれもいいとこですよ。日本では規格はずれは通用しない。

今 あんなこと言えないよ。あれが言えるぐらいなら、オレ、勘当されたとき、めし食えたよ。浅草で三日も食わずにいたのは「お願いします」って一言わねえからだよ。オレに票を入れろ、入れねえ奴は、バカで低能で、国賊だ(笑い)。川端(康成)が聞いてて「あ、あれで百票減った。あ、これで百票減った」、計算して歩いているんだ(笑い)。

戸川 あたし選挙の時期になって、あの「お願いします」の悲壮な声を聞いていると、つくづく淋しくなってきて、なんであんな思いまでして政治家になりたがるんだろうと思うんですよ。国民のほうが「あなたにぜひ政治をお願いします」って言うのならわかるけれど……。

今 向こうはフダ持ってて、タマはオレだよ。気に入ったら入れたらいい。いやならよせ、コンチキショウ(笑い)。これは、ここだからバラすけどな、三重県のどこかで演説会やった。珍しいことに、駆けつけてきたのが、オイ、五味(康祐)だよ。

戸川 (笑い)。

今 ヒゲぼうぼうの大掃除したような顔してやってきやがった(笑い)。それがだな、話がはじまって、一時間たっても寝てるんだかしゃべってるんだかブツブツ……。「オイ、もう一時間過ぎたじゃねえか」、「ええ、まだやってます」。何しゃべってるんだ、アンチキショウ。オレのしゃべる時間なくなるんだよ(笑い)。五味のヤロー、松本清張論をやってるんだよ……文芸講演会と間違えてる(笑い)。これはいけねえやって、もう引っ込んでくれと書いて持たしてやった。そうしたらそれを読みおるんだよ。「もうやめろっていうことですから、もう一ぺんきて続きをやります。よく考えたら、今日、ぼくは今さんの応援にきた」

戸川 フフフ……。五味さんらしいわ。彼が〝青い部屋〟(注・戸川さんの店)でボンゴ叩いてらしたとき、そばのお客が「先生、お上手ですね」って声をかけた。そしたらボンゴをやめて、お客の眼鏡をとると、床に投げて割っちゃった。あたし、おかげで損害賠償させられて……奇人だけれど憎めないわ。私もあのとき応援に行ったわね。先生に惚れてるからいったんですよ。

今 ウン。来た来た。とにかく、いまだかつて、あんな選挙ねえそうだな(笑い)、前代未聞、北海道から九州まで一度も「お願いします」なんて言ったことないんだ。

戸川 何であんなにはいつくばって「お願いします。男にして下さい」って。てめエは、それしか男になる道はないのかって言いたくなるわね。

今 日本の政府はバカげていますよ。

精神と“持ち物”との関係
戸川 ところで、先生はことし、絵画展をやられるんでしょ。小説書いて、お経読んで、絵描いたり、書もあるし、陶器もおやりになるという間口の広さ……。

今 戸川ちゃんだって、何でもやりな。

戸川 はい、なんでもやります。どうせ野良犬ですもの。先生に刺激されたのかもしれないけれど、三月二十日から、三越で、家の居候の女の子が絵の個展をやるの。それの賛助出品で絵を描くんですよ。兄は絵描きだったけど私は駄目だから、それならいっそのこと体に絵の具ぬって立っていようなんてせっぱつまった心境。それから、あんまり野坂さんに「あんたはベテランでおれはスターだ。レコード一枚も出してないだろう。おれはLPまで出しているから、やっばりスターだ」って散々いびられたから、レコード出して売って歩こうと思って。野坂さんより上手いと思うけどなあ。でも先生、一つだけ売らないものがあるんですよ。売らないんじゃなくて売れないのか(笑い)。

今 かわいコちゃんのなのに売れねえか。いいよ、オレはもうさわってるんだから。

戸川 アハハ……また、そんなこと言って。さっきから、お医者さんごっこっていう感じね(笑い)。

今 いやいや、さわらせねえんだ、いまだに。やっばり、恋人ならさわらせるんだろ。だいたい、女流作家なんていうものは、もう粗マンに決まっとるよ。粗マンだから小説書けるんで、いいマンだったら、せっせとそっちのほうや(笑い)、だれが放っとくか。

戸川 それは先生のお言葉ですけどね。

今 はい。

戸川 お言葉を返すようですけどね(笑い)。

今 いけませんか。

戸川 実に大ざっぱで、女を極めておられませんようですね。良粗の問題と好き嫌いの問題は、おのずから違うのでは……(笑い)。

今 いや、大体、女で小説書こうなんてあまっこは、いいもの持ってたら、だれが放っておくか。だれも相手にしねえから、小説書いているんだよ。

戸川 こっちだって意思があるんですから、選ばれたって嫌だっていうことがあるんですよ。

今 オレなんざア、小説に手がまわりかねるほど、いい女にぶつかりどおしたんだ。御年十六から今日に至るまで。

戸川 それ、どういうところで選ぶわけ?

今 何となくわかるんだな(笑い)。

戸川 どうかしら。おかしいわねえ。

今 男性の粗チンについてはダナ、これ、オレに言わせてくれ(と、コロンところがる)。

戸川 異常興奮じゃないの(笑い)。

今 オレ、今日初めて五木寛之って人から挨拶されたよ。(注・故池島信平文芸春秋社長の葬儀の日)そうしたらな、オイ。不健康な青ざめた顔をして、幽霊のように毛をかぶって(笑い)。いや、毛があるから、オレはひがんで言ってんじゃねえんだよ。間違わないで下さい。だけどもナア、いくら毛があるったって、あれほどかぶらなくてもいいというほど毛をかぶって、オレみたいな健康な色をしていないよ。青ざめて、胴なんて細いだろう。あれに、おまえ、太いのがぶら下がる道理がないよ。もしぶら下がったら、前につんのめっちゃうよ(笑い)。

戸川 そんな計算は成り立たないわ。いくら胴が細くて不健康だって……(笑って喋れず)。精神状態と持ち物というのは、バランスとれていないから……。

今 そう、精神はだいじだよ、精神よ。オレみたいなごっついやつ、ゴボウ三本束ねたようなやつになってくると、おまえ、医者に宣告されて、このくらい達者なんだから(笑い)。

戸川 あのね、五十二歳の女の人が、失恋したといって、私の友だちのところへ泣きに来たのよ。とにかく、四年間つき合っていた相手の趣味が、つまり、惰事なわけ。四年たった今でも、一切手を抜かないで四時間なんですって。そうすると、女のほうは年齢のハンデ一切なくて、だんだん感覚とか感度が磨かれてきて、ますますセックスヘの執着が強くなって、これじゃ大変と考えるようになったというわけよ。でも、終わったあと、実に空しいんですって。精神が何もないけど、その人の趣味だからやる……。自分も密度の濃いセックスに慣らされてしまっているから、せずにはいられない……でも空しい、このくり返しが極限に達して、とうとう別れを決心したんですね。

今 そういうのいるよ。オレの知っている県会議員が三重県にいるの。六十幾つで、その恋人が八十幾つのおばあちゃんだよ。

戸川 ヘエー!?

今 政界じゃ有名よ。「あれ、八十二だけど泣きはええねン」いうとるんだから(笑い)。八十二で泣くらしいな。オレを脇に寝かせてくれて、やるとこ一べん見せるっていうんだけど、ひまがなくてね。ところが婦人科の医者に有名なガマ先生ってのがいるだろ。今さんが行くなら、オレも行って録音とって、学会報告したいって(笑い)。

戸川 ですからね、女性っていうのは、だんだん磨かれれば磨かれるほどいいわけで、上がってしまうとか、上がらないとかって関係なくなってくるわけでしょう。

今 一番いいのは、メンスの上がった女は別として、メンスのある女で後家さんになって五年だ、十年だっていうのが、こんど男ができてやり始めるだろう。メンスの量が多くなるんだよ。若返るんだよ、内部が。で、その八十二のばばあが、男の選挙になると先頭切って、これが票稼いじゃうんだって。だから、彼は色と欲との道連れで彼女をだいじにしているんだ。

戸川 説得力があると思うな、八十二でそれだけの闘志を持っている人というのは。人生に自信があるのね、きっと。でも八十二で男に抱かれて泣くなんて、ワクワクするわ。先生みたいに全国区だと、県会議員並にはいかないかもしれないけれど(笑い)。

今 もう出ねえからいいけど(笑い)。

戸川 こないだ芸者さんに聞いたんだけど、ふだんから色の道に精出してないと、生理がなくなったとたんに性欲がなくなって駄目なんですって。八十二歳でも、たえず磨きがかけられているからいいんですね。

今 要するに、粗マンを……。

戸川 またっ! しつこい(笑い)。

今 じゃ、やめるか……(笑い)。

前代未聞、女のナマグサ坊主?
戸川 先生には、一度、どうしても坊主になれっていわれましたね。

今 お昌は、お寺持っているからな。あれ、どうしたの?

戸川 仕方がないから、夫婦養子にしたんですよ。

今 オレ、勧めたんじゃないよ。

戸川 ウソッ、先生が勧めて下さったのよ。

今 その寺をもらえる因縁があるんだな、このコに。オレは、それをもらいなさいって言うんだよ。

戸川 先生は私に「おめえなア、あんなものなア、ちょこちょこっとお経読んでりゃアわかんねえんだから、おめエ、ああいうのを持ってりゃ、今に土地の値が上がるし、別荘だと思ってりゃいい」って……(笑い)。
だけど、やっばり、ちょっとね。でも、女のナマグサ坊主じゃ、檀家が承知しない。それに有髪じゃ、ダメなんでしょう。

今 いいんだよ。おまえのほうの門徒宗は。オレのほうだってかまわねえ、この頃は。坊主が中抜きって、お布施が少ないと、ちょいと、お経の頭と尻だけ読んでパアーンと鐘叩くんだよ。だけど、それは下手な奴のすることで、オレは、お布施によって一行おき、もしくは二行おき、三行おきに読んでいくんだ(笑い)。

戸川 先生ったら「おめえ、それやりゃアいいんだから」って。シャンソンみたいに読んでりゃいいとおっしゃったわ。仏も災難だ、成仏するはずありませんよ。

今 だれもわかりゃあしねえんだから。それは般若心経みたいなものなら知ってるけど、あのバカどもにわかりゃアしねえんだ。

戸川 でも、二行おき、三行おきっていったら、全部読むよりむずかしいわねえ。

今 ナニ、別にもう一べん戻る必要ねえんだ。それを天台宗のオレのところに言ってくるんだ。「三部経あげておくんなはれ」、「オレは坊主だ。お経のことはまかしておけ」って、オレは勉強するんや。華厳経だの、大乗起信論だの、わかりゃアしねえんだ。さかさにしたって、生まれ変わったってわかんねえ(笑い)。オレは三部経あげてる面アしながら、えエーっていってると「和尚さん、お疲れでっしゃろ、おぶウ」って「そオかアー」言いながらお菓子食うて、お斎(とき)よばれて、それで、えらい勉強しましたわ(笑い)。

戸川 要領のいい勉強方法ですね。でも私は駄目だ。お尻が重くてしびれがきれるから何時間も坐れない。

今 まあな、この人みたいに忙しいと、かわいそうだ。もう少し年取ってこの話だったら、隠居寺持っておけばいいんだよ。あとはオレが管理してやる。ろくでもねえ檀家総代いやがったら喧嘩ぶってド突き上げて、片づけてやるし。

戸川 喧嘩だったら、私も木刀持って出て行きますよ。女東光になれたかもしれないな(笑い)。

今 ほで、一ヵ月か二ヵ月休養するといえば、てめエの寺へ帰ってきて、ひっくり返ってらいいだろう。

戸川 それはたしかにそうね。

死ぬまでしゃべりまくる
今 ところで、今度ナ、オイ、野良犬会って会をこしらえようっていうんだ。入れよな。

戸川 野良犬が群れをなすわけね。

今 メス犬一匹くらいいねえと、オス同士じゃアな。

戸川 メス野良が……男ばかりの中の女一人でも、女王蜂とはずいぶんイメージが違う(笑い)。ムサイ男たちの下着の洗濯でもしますか。

今 最後、強いヤツが上へ乗っかっちゃうんだ(笑い)。

戸川 犬なんだから、サカリのついているのしか乗れませんね。

今 やっぱり昌子は野良犬だよ。それでなきゃあ面白くねえ。

戸川 いろいろなことを経験するのは好きだけど、残念ながら夫婦というのだけは、実感としてわかりませんね。頭ではわかるけれど、具体的なことがね……でも、このあいだ先生の個展で先生と奥さまの姿を見ていると、ああやっばりいいなあ、と思ったりしてね。

今 そオーお?全部監視されているんだぞ、おれは。

戸川 先生は偉そうなことをおっしゃっても奥さまの前では全くの子供みたい。奥さまが鵜飼いで、先生が鵜みたいに見えたわ。それに長年連れ添うというのはやっぱりいいな。「腹が痛い」って言えば、説明しなくてもすぐその場所をキュッと押してくれるじゃありませんか。

今 そのくらいのことしなかったら、何で飼っておくか、バカ(笑い)。だけど、おまえら、亭主持ったことないから夫婦の味知らねエというけど、オレ、自分に子供がねえし、弟のガキも抱いたことないんだよ。
若いとき、谷崎潤一郎が、まだ東京にいる頃に行ったんだ。女の子が生まれて間もなくのことだ。奥さんが「あなた、ちょっと抱いてて下さい」って、ちょっと渡して、下に行かれたんだ。谷崎先生が抱いて、オレと話してたんだよ。そこへ、奥さん上がって来て、ひょっと見て「あれッ、何しているのッ」って、ひったくった。オレもびっくりして、先生も変な顔して、気がついたら、さかさに抱いてた。

戸川 ほんとですかア?(笑い)。

今 おお、ほんと。それがオレも気がつかないんだよ。ガキ持ったことないから。

戸川 さかさま……?(笑い)。

今 真っ赤になってね。

戸川 きっと、くるんであったのね。

今 おくるみにくるんで、パッと渡した。だからドタマ下へ来ちゃって、足が出ていれば谷崎先生も気がつくけど……。

戸川 まったく嘘みたいな話だわ(笑い)。

今 オレが子供持ってたら「あ、先生。さかさまですよ」と言うんだけど、ははアとか何とかしゃべっていて「二人もいてなによ!」って怒られちゃった。やっぱり経験ないっていうことは具合悪いね。

戸川 でも、経験するために、ずいぶんとやっぱり……。

今 苦労したけど、オレは、とうとうガキは生まずじまいで終わったからね。

戸川 私も亭主って知らないけれど、だいたい見当はつく。

今 でもね。戸川ちゃんのは、まだ男が出てくると、これが恋人だか、亭主くらいのことは区別して書いているよ、感心にな。オレの小説には酒飲む場面が少ない。

戸川 そういえばそうですね。

今 それ、みんなに注意されるな。初めから終わりまで酒飲んでるところがなかったり、飲まずにすぐ、やっちゃったり(笑い)。

戸川 プロセスははぶく……(笑い)。でもお酒に酔うのって好きだわ。この頃、先生、お飲みになるようになりましたの?

今 そうだな。

戸川 講演にご一緒してた頃は、全然でしたね。ちっとも飲んでいらっしゃらないのに、一番助平な話をなさるし、一番さわるの。

今 この頃、ブランデー飲む。おいしいんだよ。

戸川 おいしいでしょ。

今 毎晩飲むよ。考えてみれば、これはブドウ酒みたいなものだから。

戸川 それも、とても上質なもの。

今 (急に咳込んで、ワイシャツの上のボタンをはずすように言われて)いや、ここを出すと、首のシワが出ちゃうからな。のどが出て色気がなくなるから。

戸川 まあ、先生はすてきですね。色気を気になさるなんて……意外だわ、頼もしいわ……(やたらに感心)。お世辞じゃなしに言いますけれど、今先生って、初めてお会いしたときにくらべて、みごとに変わってらっしゃらない。

今 口だけは達者なのよ、からだは弱ってもね、オレは死ぬまでしゃべくって死ぬんじゃないか。

戸川 私、川端先生が亡くなったときなんかほんとにショックでした。先生を見てるの辛かったわ。

今 いや、あのときは、からだが一番悪い最中だった。

戸川 大丈夫かなア、と思って心配していたのよ。

今 だから新聞記者まで「オイ、川端さんの次は今さんだ」なんて言ってたんだ。ひでエことを言いやがるんだよ、オイ、新聞記者っていうのは。それに、テレビっていうのは悪いとこばっかり撮りやがるし。

戸川 先生はいまお幾つ……?

今 七十四。

戸川 うちの、おっ母さんと同じだわ。

父と今先生の姿がダブって……
今 ずっとお母さんとご一緒ですか。
戸川 そうです。一度も離れたことないなんて気味悪いですね。でも誰かみたいに一卵性母子じゃありませんよ。もっと客観的です。

今 いいおっ母さんなんだろう。おまえはしあわせだよ。オレなんかのばばあときた日にゃア、継母よりひでえ虐待しやがって……。

戸川 でも私、そのほうがよかったような気がするなあ。

今 ナニ、そんなことあるかい。おめエ、うちの親なんか、病気見舞いに来て喧嘩して、寝てるところで「死ねえ死ねえ」って言いながら、見舞いに持ってきたもの持って帰っちゃったよ、オィ。

戸川 私、そういう母親が好きなのよ。私が母親だったらきっとそうなったと思うわ。

今 そんなのねえよ、おまえ。

戸川 うちの母なんて、そういうふうに外向的にパッと出てこなくて、私と喧嘩するとシクシクウーッって泣いて、なぜこんなに自分は不幸せなんだろうってタイプなんです。シンドイですよ。

今 お父さんは?

戸川 先生と似たタイプだったんですよ。それでどうも二重写しになって、お父さんと呼びたくなってしまうんです。

今 いや、だけどな、オイ。文学者ってものは、だいたい川端式、五木式のやさしいとこがあって、そこがモテるのに、あんまり神経が太くて、喧嘩ばかりしてて、気の強い奴なんてのはダメだな。

戸川 先生のモテ方は、どういうモテ方なんだろうと思って……。

今 もてやしないよ。

戸川 ずいぶん拝見してますけど、先生は本気で女をロ説いたりしないんでしょう。だから目新しいときには、嬢ちゃん、とかね(笑い)、可愛らしいとかジワッとくるんだけど、次にはマーチャンになり、しばらくすると、「オイ、おめエなア」ってことになるわけ。

今 要するに、野良犬じゃ(笑い)。

戸川 男の野良犬ってカッコいいけど、女の野良犬って、薄汚い感じですね、どうも(笑い)。まあ、でも鑑札つきの野良犬になったところで、もっと自分のしたい放題してみることにします。私、ここ二年くらいは混沌とした実生活をしてみたいですね。自分を見失うような……年齢的にもちょうどそうだし。若いときに踏みはずせなかったから、これから大いに踏みはずそうって。そのあとまた書きはじめたいわ。先生、野良犬会のメンバーはなるべくいい男がいいな(笑い)。

今 野良犬会の会長はオレなんだ。あとは柴錬(柴田錬三郎)、野坂(昭如)な、田中小実昌、黒岩(重吾)、梶山(季之)、それから藤本義っちゃんが入れてくれい言うて、いまンとこ、野郎は七人。

戸川 だけど、野坂さんはひどい人ですよ。この前、テレビで、野坂さんとおかしなジョイントリサイタルをしようっていうことになったの。野坂さん、始まる前にもうダルマ一ビンぐらいあけてきたのね、ベロベロに酔っ払って立っていられないくらい。トレードマークの眼鏡をはずして、おれは宝塚の男役でゆくって一センチ五ミリくらいのつけまつ毛つけて、おまけに胸毛までつけてね。グロテスクに徹すると美に変わることを知ったわ。台詞は「ぼくは、あんたが好きだった」、「あんたと寝たかった。なのにあなたは何もしてくれたかった」って。これ本番だっていうのに(笑い)、台詞に真実味がこもっていなくてね、よけい頭にきた(笑い)。

今 ……わかった、胸毛までつけて口説くようでは粗マンらしくねえや。野坂は野良犬会の会員なのに、会長の許可を得ずしてそういうことをやるのはよくねえな。

戸川 でも、ああいうとき男に徹底的に困らせられると、かえってかわいくなってくるのね。だってネクタイも結べないんだもの。ヨレヨレになって、だらしない顔になって。こっちがオシッコの時間まで気にしてあげなくてはならないみたいで……まるで幼稚園だわ(笑い)。

私も喧嘩っ早くて困ります
今 そういえば、あんたと文士劇やったね。

戸川 先生と文士劇ご一緒したときはひどかったわア。「召し捕れえー」なんて追いかけられて、お尻さわられたり、胸さわられたり、すごいんだから(笑い)。

今 そうじゃないんだ。オレはおまえを殺す役なんだ。オレは脇腹を短刀で突いて、死ぬかと思ったら、死なねえで、何かぬかしているんだ。「オイ、死ねよ死ねよ」と言うのに、死なねえで、まだ向こうに歩くから、しようがないからケツ突いたら「エッチ」なんて言ってるんだ(笑い)。もう、こうなったらしようがねえっていうんで、ワレメんとこへ、短刀突っ込んだ。「ナニするのよッ」て言うなり、オレをポオーンと突いたんだよ。オレ、ひっくり返って、プロンプターまで引っくり返って……ひどい芝居だよ。死ぬ奴が突き飛ばすことねえだろ(笑い)。

戸川 だって「おめエ」とか何とかいいながら、へんなところばっかり、ピチャピチャ叩くんだもの。そんなんで死ねるはずないわよ。

今 短刀で思い出したけどな、菅原道真の「去年の今夜清涼に侍す……捧持して」っていう句があるな、大宰府で作った。それを『文春』の語呂合わせみたいのを作るときに坊やのおしめ捧持して何とか、と書いたら、右翼がユスリにきたんだ、不敬だって言って。菊池寛の所へ行ってピストル突きつけたり、ドス見せたりして、社の大部分が逃げちゃった。菊池寛、ケローッとして応対して、しまいにあきれて帰って行った。みんなが「先生、こわくなかったですか」、「こわくない。だってキミ、あいつら、オレを本気で殺す気ないんだもの。カネにする気できているんだから、ちっともこわくないよ」って。ちゃんと計算しているんだから、偉いものですよ。本当に殺しにきた奴は,「ボインと突いたろかア」なんて言いやしないよ。黙ってブスッとやる。

戸川 そうでしょうね。私も女のくせに喧嘩っ早くて困ります。もうだいぶん前ですけども“青い部屋”にヤクザが日本刀持ってきて「ドッ突くぞオー」ってやられたことがあるんです。左のおっばいのところに日本刀の先を感じたときは、さすがに緊張したけど、ああいうときってかえって肝がすわるんですね、お客さんに迷惑かかるから外へ出ようじゃないのなんてまだタンカ切ってね。ちょうど居合わせた筒井康隆さんと結城昌治さんが抱き合ってオシッコもらしたとか、五木さんが真っ蒼になって震えてたとか、妙な伝説が残って、ますます気の強い女に仕立てあげられちゃった。

今 「やい! 今東光。オレはおのれ気に入らねえ」なんて言ったときには文句入り都々逸みたいなもので「オッ、やってこいッ」てなもので、ビクともしないけど、問答無用が一番こわいね。オレ、若いとき、浅草のテキヤの若大将と仲良くなって、そいつの家に行ったんだ。二階へ上げられてお茶飲んで、お茶がカラになったんだ。そしたら「あ、先生お茶ないね」って言うから「お茶、もう一杯もらおう」。ふつうなら「おい、おい」とか手を叩く。ところが畳叩くんだよ。「何してんだよ」と言ったら、「おいっ」て声かけたり、手を叩いたら、もし、狙っている奴が殺そうと思って家のぐるり取り巻いていたら二階にいるということがわかって、よその二階からまわって襲撃される。だから、畳を叩けば、よそに聞こえずに、下には聞こえるというわけだな。あのときは、オレ、コンチキショウの巻き添え食ったらえ,らいことになると思ったナ。テキヤなんて、殴り込み、しょっちゅうでしょう。

戸川 今まで何もなくて、ほんとうによかったですわね。

今 まあ、オレもしおらしくしてればいいけど、そうもいかねえだろう。だから「あの野郎、やってやれ」っていうふうなもんで、まあ、これまでよく生きてきたよな(笑い)。

戸川 先生、これからも気をつけて下さいよ……。まだまだ血の気が多そうだから。


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