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人生は冥土までの暇潰し

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人生は冥土までの暇潰し
亀さんは政治や歴史を主テーマにしたブログを開設しているんだけど、面白くないのか読んでくれる地元の親戚や知人はゼロ。そこで、身近な話題を主テーマに、熊さん八っつぁん的なブログを開設してみた…。
和僑
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数日前になるが、『境界の民』(安田峰俊著 角川書店)という本の書評をネットで読み、著者である安田氏の生き様に興味を持った。そこで、安田氏の他の著作を調べてみたところ、同じく角川で出している『和僑』に目が留まったのである。と言うのも、忘れもしない1998年9月30日、亀さんは長年のサラリーマン生活から足を洗い、独立開業の世界に飛び込んだのだが、その時に大変お世話になった一人が和僑の名付け親であり、ジェイクスを設立した深村社長だったからだ。だから、懐かしさも手伝って早速『和僑』を取り寄せたという次第である。

一読して、著者の安田氏は亀さんと同じ〝臭い〟を持つ人物であることが、最初の数ページを読み進めただけで分かった。同書は中国が舞台であり、登場する主な日本人は以下の6人だ。

●雲南省の少数民族の女性と結婚し、同地に根を下ろした日本人。
●マカオでカジノの買い取りたいという野望を持つ日本人実業家。
●からゆきさんとは異なり、自らの意思で渡航する日本人風俗嬢。
●〝日本人村〟という温室の中で生活を送る日本人駐在員と家族。
●上海における日本人村の〝司法・警察〟となった元暴力団組長。
●天安門事件を境に一変した、日中友好協会と会員たちのその後。


特に興味深かったのは元暴力団組長の話であった。その元組長、あの金嬉老と熊本刑務所で同じ臭い飯を食った仲であり、その金嬉老の欺瞞に満ちた言動を明確に指摘していたあたりは流石である。この組長について述べた第5章を読んで脳裏に浮かんだのが、佐野眞一の『阿片王―満州の夜と霧』だった。旧ブログでも記事にしたことがあり、安田氏の『和僑』にも里見甫が登場している。

ところで、元暴力団組長が「上海における日本人村の〝司法・警察〟となった」とはどういうことか、分かりやすく解説した箇所を『和僑』から引用しておこう。

上海の日本人社会は、「一〇万人」規模の人間が暮らしているにもかかわらず、有効に機能する警察機関や司法機関が事実上存在しない、極めてアナーキーな空間なのである。

だが、社会の内部では日々多額の金銭が遣り取りされている。豚骨ラーメン屋や牛丼屋から、キャバクラ・雀荘・風俗マッサージ店にいたるまで、日本人を顧客としたビジネスも違法合法を問わず盛んに展開されている。当然ながら、カネが動く場所にはトラブルの種が播かれる。

加えて、周囲には生き馬の目を抜くような中国人商人や現地の不良警官が、日本人の商品や財産を奪い尽くすべく手ぐすねを引いて待ち構えている。

上海日本人社会の内部で暮らす住民たちの間で、社会の治安と秩序を維持する機関を、私的に成立させようという動きが出るのは自然なことであった。無政府資本主義(アナルコ・キャピタリズム)の教科書さながらの、警察権と司法権の民間委託現象が発生したというわけだ。

中国唯一の日系暴力団組織・義龍会は、まさにこうした現地の事情によって産声を上げた。

上海の日本人社会の人々は、かつて「インフラの一種」として、教育機関である日本人学校を設立した(第三章参照)。彼ら日本人たちは、さらなる「インフラ」を整備するべく、警察と司法の機能を代替できる暴力装置の存在をも必要としたのだった。

結果、上海に暮らす日本人商工関係者たちは、借金を踏み倒す日本人債務者を捕まえたり、商品を持ち逃げする中国人商人に睨みをきかせたり、営業にいちゃもんをつける中国の官憲を突っ撥ねたりできる、自前の安全保障システムの確立に成功したのである。

(p.224)


今日の日本ではヤクザとか暴力団というと顔をしかめる人たちが多いのだが、任侠というものを理解していれば彼らに対する見方が変わるはずだ。『月刊日本』誌で任侠に関する優れた記事が掲載されたことがあり、同記事を旧ブログに転載しているので一読してもらえたら幸いだ。
後藤組の仁侠

また、以下の拙稿も役に立つかもしれない。
『侠-墨子』

さて、『和僑』を通読して気になった箇所は以下の行である。

アメリカをはじめとした欧米圏に関わる日本人は、自国についても相手国についても、比較的ドライで理性的な(もしくは「バタ臭い」)姿勢で向き合う傾向が強いように思える。

だが、その場所が中国になると、日本人はなぜかみんな揃って、ウェットで泥臭い「日本」を漂わせる。ヒロアキさんのように普段の生活では完全に日本を捨てているように見える人ですら、彼らが時折見せる自国の匂いはおそろしく古めかしくて「濃い」のだ。

その理由は、中国という外国が、良くも悪くも日本人の自己認識を刺激するからではないか。中国は(少なくとも欧米と比べれば)日本との地理的距離や文化的な距離が近く、庶民の問でも相手の国に対する多少の関心があり、尊敬と蔑視が入り混じった先入観もある。そのため和僑たちは、中国で「日本と同じようなもの」を探したり、日本人としての個性を強調したり、逆に「中国は日本と違って怖い国」だからと敬遠して日本人だけで固まったりと、やや自意識過剰気味な反応を示す。

中国を相手にすると、日本人は「日本人であること」を過剰に意識してしまうようなのだ(余談ながら、わが国の「日本」という国号の由来は、七世紀後半の遣唐使の時代に、中国から自国を見て「日の出の方向にある」のでこの名を称したとする説が有力らしい。すなわち、われわれの祖先たちは、自分たちが「中国とは違う」存在であると意識したからこそ「日本人」になったのだ。中国というのは、大昔から日本人のアイデンティティの形成と非常に縁が深い国なのである)。
(p.306)


詳しくは『和僑』に譲るが、「雲南省の少数民族の女性と結婚し、完全に同地に根を下ろしたと思えるヒロユキさん、そのヒロアキさんが〝時折見せる自国の匂いはおそろしく古めかしくて「濃い」〟と安田氏が述べているあたりは面白い。尤も、何も中国に限らずブラジル、アルゼンチン、アメリカといった国々に住む日系人、殊に一世も正に古めかしくて濃い自国の臭いがしていたのを覚えている。ただ、そうした日系人に亀さんが出会ったのは1972~74年頃だったので、あれから40年以上もの歳月が流れていることもあり、その間に日系人二世・三世へと世代交代が行われ、今日では安田氏の言うような「自国についても相手国についても、比較的ドライで理性的な(もしくは「バタ臭い」)姿勢で向き合う」日系二世や三世が主流を占めていることだろう。

ここで、人の思考行動形式を支配している根源的なもの、それはその人の母語であると亀さんは思っている。そのあたりを教えてくれたのが、同時通訳の泰斗・故國弘正雄であった。國弘先生の資料が見つからないので朧気な記憶で書くが、「人の生涯の母語は小学校2~3年生ころまでに決まり、その年齢を過ぎると後はどんなに努力してもバイリンガルには成るのかせいぜいで、一部の天才を除き、絶対にバイカルチャーには成れない」というものである。これは亀さんの体験からもその通りだと思う。英語と日本語のバイリンガル、時には数ヶ国語を自由に操る知人友人には数多く出会ったものの、未だにバイカルチャーの人間と出会ったことはない。

だいぶ話が脱線してしまったが、上行で亀さんが気になったのは、安田氏にツランという視点が欠けている点である。尤も、ツランと言っても馴染みのない言葉なので、安田氏に限らず戸惑う読者が多いかもしれない。だから、ツランに関心のある読者は、栗本慎一郎の一連の著書(たとえば、『シルクロードの経済人類学』)に目を通したり、天童竺丸さんの巻頭言の中から、ツランに関する記事を一読していただきたい。

最後に、『和僑』を取り上げたもう一つの理由を挙げておこう。それは福島原発に関連することだが、ここ1~2年のうちに数百万人の日本人が死に、日本列島が人の住めない列島となり、海外移住をせざるを得なくなる可能性が高まってきているが、そうした日に備えて何等かのヒントにして欲しいと思ったからだ。飯山一郎さんが最近書いておられる記事、例えば今朝の「◆2015/05/03(日) 異常な夏日が続く東北:この原因は?」などにも目を通しておこう。

 単なる国家に過ぎない中華人民共和国と、中国大陸一帯の地域や文化や人間たちの総体を意味する「中国(支那)」は、本来は似て非なる存在だ…(p.265)

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コメント

和僑っていう言葉があったんですね!

私も海外在住組みですが・・・。

外国に適応しやすい人と、できにくい人って
遺伝子的傾向があるんじゃないかな、って
気がしています。
または、精神性・意識なのかも知れませんが・・・。

家族、民族、国という単位で物事を小さく考えるか
地球・宇宙という大きな単位で考えるか・・・。
そのあたりの違いかな、という氣もしています。、

ツランの民は、きっと地球・宇宙規模で物事を
考える傾向が強いのではないかと・・・。
[2015/05/05 00:48] URL | ひろみ #3USpdlJ2 [ 編集 ]

民族集団移住
お早うございます。

> 外国に適応しやすい人と、できにくい人

大多数の日本人は祖国を離れ、外国でサバイバルするのには不向きだと思います。尤もこれは年代によるもので、二十代あたりまでなら何とかなり、三十代に入ると仕事も中堅どころだし家庭があるので難しい、中高年に至っては自分の育った故郷から中々離れたがらないものです。だから、福島原発の実態が次第に明らかになれば、東日本の人々の間に衝撃が走って大パニックに陥り、新井信介氏がブログで述べているように、大勢の人たちが安全圏である同じ日本の関西方面に殺到することでしょう。

加えて、今の安倍政権は無能なので、飯山さんが仰せのようにロシアと中国による日本の〝国際統治〟を受け入れざるを得ない可能性が日増しに強まりつつあります。
[2015/05/05 04:55] URL | 亀さん #FlJCcfGk [ 編集 ]


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