俺とこの女は生まれる前から、運命の不思議な赤い糸で結ばれているんだよ。 第48作「寅次郎紅の花」
渥美清の最後出演となった第48作「寅次郎紅の花」は、ろうそくの最後のゆらめきの如く、まさに燃え尽きようとする渥美清の命を映し出した作品だった。

ところで、第48作「寅次郎紅の花」の上映は1995年12月23日だったが、そのほぼ4年前の1991年10月12日、同じ山田監督の手によって映画「息子」が公開されている。同映画を観ながら、永瀬正敏演じるバカ息子の浅野哲夫が、あまりにも亀さんの若い時にそっくりなので、初めて同映画を観たときは唖然としたものだった。
以下は東京は下町にある小さな鉄工所の休憩室のワンシーンで、その鉄工所にアルバイトとして雇用された哲夫が初日の仕事を終えて帰宅した後、残っていた同鉄工所の古参の社員3人が、「今日の兄ちゃん(哲夫)が明日出社するかどうか」を賭けているシーンだ。
 あの兄ちゃんが明日、出社するかどうかを賭ける三人…
なぜ、このシーンが印象に残ったかというと、亀さんも哲夫のように正規・バイトを含め、20職種ほどの仕事を転々としたことがあるからで、長期にわたるバイトをしていた時、一日来て翌日はもう来ないという人間を沢山見ているからだ。むろん、映画を見ている観衆は明日も間違いなく哲夫が出社することを知っている。何故なら哲夫はその日、鉄製品を納入する先の工場で、和久井映見演じる川島征子と運命の出会いをしているからだ。
 初めて会った征子を見て、口をあんぐりの哲夫
しかし、今では哲夫よりも三國連太郎演じる父親の浅野昭男に、寧ろ感情移入するようになった自分がおり、改めて映画「息子」の上映から四半世紀近くの時間が流れていることを思い知ったのである。

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