
拙稿「IT戦争という名の第三次世界大戦」でも述べたように、書架に眠っていた『スノーデンファイル』(ルーク・ハーディング著 日経BP社)を引っ張り出し、仕事の合間に読み進めていたのだが、このほど漸く読み終えた。
著者のハーディング氏は、2007~2011年にわたって、英国の『ガーディアン』紙のモスクワ支局長を務めていた人物なので、ロシアさらにはプーチンについて、文明史観に立脚した同氏の深い洞察力を披露してくれるものと期待し、目をこらしながら『スノーデンファイル』の全ページに目を通したのだが、見事に期待を裏切られた。ハーディング氏はロシアの懐の深さについて言及するのでもなければ、プーチンの肚を窺わせるような記述も一切無かったのだ。だから、「底の浅い本だなぁ」というのが正直な読後感だ。
亀さんは二十代から三十代にかけての頃、15年以上にわたって『Guardian Weekly』を定期購読しており、実に多くのことを同紙から学んだ。そのガーディアンの、しかもモスクワ元支局長だったというハーディング氏なのだから、今の亀さんのロシア観を一層深めてくれるものと期待していただけに残念だった。
ところで、佐藤優氏が同書で以下のような推薦の言葉を述べている。
本書は国際政治の現実を知るための最良の教科書でもある。
最良という形容詞には賛成できないが(国際政治の現実を知るための本であれば、同書よりも遙かに優れ、洞察に満ちた本は他に数多ある)、佐藤氏の言う「教科書」という主張はその通りだと思う。ここで亀さんの思っている「教科書」とは、事実・情報・データを上手く並べたテキストといった程度の意味であって、それ以上でもそれ以下でもない。だから、同書でスノーデン事件の〝事実〟をお復習いするのは良いとしても、同書に書かれていない〝真実〟を捉えるには洞察が必要だし、こうした深掘りは各自の仕事になると思う。そのあたりの足がかりとして、拙稿「プーチンの肚」などを参照して戴ければ幸いだ。
ところで、同書の発行元が日経BP社とある。日経はCIAとモサドのエージェント的なマスコミであり、その日経から『スノーデンファイル』が出版されたのは興味深い。尤も、「IT戦争という名の第三次世界大戦」で紹介した映画「シリアナ」が、封切り時点で公になっていた事実を映画にしたのにすぎないように、同書も公になっていた事実を本に纏めたのにすぎない。だから、親分(CIA&モサド)からのお咎めはなく、堂々と出版できたわけだ。

一方、「シリアナ」や『スノーデンファイル』のような既知の情報ではなく、未だ公になっていない情報を公開してしまうと、必ず権力から圧力がかかる。そのあたりを如実に物語っていたのが、最近NHKで放送された「BS世界のドキュメンタリー」の「強いられた沈黙」(前編・後編)という番組である。CIAだけではなく、あのNSA関係者も登場していたのは興味深い。
なお、CIAが支配下に置いているのは何も日経だけではない。自民党を始めとする日本の権力構造は、押し並べてCIAやモサドのヒモツキであるのは、今日では常識の部類に属す。そのあたりを明確に物語っているのが、以下の漫画の一コマだ。東京地検特捜部が佐藤氏から〝モサド〟という言葉を耳にした途端、慌てて佐藤優氏を釈放するという一コマであり、日本の権力との繋がりを見事なまでに炙り出している。
 「憂国のラスプーチン」第5巻より
- 関連記事
-
スポンサーサイト
|