昨年末の12月7日から10日にかけて、中国の習近平がサウジアラビアを国賓訪問している。両国間で何が話し合われたのかについては、中国通である近藤大介氏が現代ビジネスに詳しく書いており、中国とサウジの間で取り交わされたビジネスの概要を把握する上で参考になろう。 習近平主席「サウジアラビア国賓訪問」に透ける“真の目的”と中東が見せた“中国以上のしたたかさ”
様々な情報で満載の記事だったが、個人的に最も注目したのは、基軸通貨を巡るドルと人民元の争いだった。近藤氏の記事によれば、習近平はサウジで行った講演で、「エネルギー(天然ガス・石油)決済は、ゆくゆくは米ドルを使わず、人民元で行いたい」と語ったようだ。
それに対してサウジは、エネルギー人民元決済は「時期尚早」と鰾膠も無かったようで、そうした中国とサウジの温度差について近藤氏は、サウジのお家の事情を以下のように解説していた。
リヤドが保有する1200億ドル以上の米国債を含め、サウジアラビアの資産と準備金のほとんどはドル建てだし、サウジアラビアの通貨リヤルは、他の湾岸通貨と同様にドルペッグ制(米ドルと固定比率で連携)である。
さて、現在の基軸通貨は言うまでもなく米ドルだが、その米ドルも1971年8月15日、ニクソン大統領による金ドル交換停止という新経済政策(ニクソンショック)で、結果的に米ドル衰退の第一歩を踏み出してしまった。それでも、ドルが基軸通貨の地位を保てたのはペトロダラーのお陰である。つまり、ニクソンショックで金の裏付けを失った米ドルだったが、今度は原油で裏付けするようになった、つまり、ペトロダラー体制を打ち立てたことにより、今日に至るまで基軸通貨の地位を保てたことになる。このあたりについては、以下の記事が参照になる。 石油はドルでしか買えない、だからアメリカは強かった いつか人民元の時代が来る?
なを、上掲の記事では述べていないが、ペトロダラーを誕生させた人物こそ、ニクソン政権下で国務長官を務めた、キッシンジャーその人だったことは覚えおいてもいいだろう。キッシンジャーは御年99歳(1923年5月27日)と高齢だが、未だに国際情勢に影響力を及ぼしている重鎮だ。
その後、2008年9月にリーマンショックが起き、それが引き金となって世界中が金融危機に見舞われた。これは、我が世の春を謳歌していた、国際金融資本の化けの皮が剥がれた瞬間でもあった。それから14年近くの歳月が流れた昨年(2022年)の2月24日、ロシアがウクライナで特殊軍事作戦を展開、それに対して西側はSWIFTの停止といった経済制裁を科したが、上掲記事にも書いてあるように、それが裏目に出た。
今回の対ロシア制裁が「ドル離れ」を加速させるだけでなく、ロシアや中国、中東諸国と、欧米などの西側諸国に世界を分断すると、柴田明夫さん(資源・食糧問題研究所)は予想する。「ロシアなどが保有する石油やレアメタル、小麦、肥料といった重要資源の取引で使われる通貨はドルにかわって人民元となるだろう。それは、ペトロダラー体制によるドル支配から、重要資源・人民元体制への移行を意味する」 石油はドルでしか買えない、だからアメリカは強かった いつか人民元の時代が来る?

ここで思い出していただきたいのは、FRB(米連邦準備制度理事会)だ。FRBはアメリカの中央銀行に〝相当する〟民間の銀行であり、数年前に天童竺丸さんに謹呈していただいた、『民間が所有する中央銀行―主権を奪われた国家アメリカの悲劇』(ユースタス・マリンズ)、藤原源太郎(山浦嘉久)さんが解説文を載せ、天童さんをはじめとする文明地政学協会のメンバーが翻訳した本であり、多分、邦国でFRBの正体を白日の下にさらした初の書籍だろう(1995年刊)。

前稿(「ヒトラーの世界」)で紹介した『謀略と捏造の二〇〇年戦争』(馬渕睦夫 徳間書店)の第一章、「国際金融国家vs.ロシア二〇〇戦争」に、「◆なぜリンカーンは暗殺されたのか」という小節があり、ケネディだけではなくリンカーンも通貨発行権を巡って国際金融と対峙、結果、両大統領とも暗殺されたわけである。だから、今日に至ってもアメリカの通貨発行権を握っているのは、政府ではなく民間の中央銀行、すなわちFRBだ。ただ、FRBや各国の中央銀行の立ち位置だが、NWO(新世界秩序)の傘下(下部組織)に過ぎないということは、以下の動画でお分かりいただけよう。
【年末特別ライブ】 武田邦彦 × 横森一輝対談 世界政府を止めるためにはITと飛行機をブッ潰せ?!
 ※ "CB"とは、Central Bank(中央銀行)の意
では、これからの世界は人民元、中共の世界になるのか? そのあたりは馬渕睦夫大使も自身の動画で語っているように、中国経済は衰退に向かっているので無理そうだ。では、次の主役は何処なのか? 一説にはBRICs(特にインド)が世界経済を牛耳るだろうと主張する識者も一部にはいるが、果たしてそうか?
超大国すなわち覇権国家になるのに不可欠なのは、エネルギー・食糧・軍事力を有する国のはずだ。その伝でいけば、そうした国は世界広しといえどもアメリカとロシアしかないのだが、この両国のいずれかが覇権国家になるというよりは、これからの世界は、各々の国の主体性を尊重し合う世界に移行するのではないだろうか・・・。つまり、アメリカはアメリカ・ファースト、ロシアはロシア・ファースト、日本は日本ファーストといった具合にだ。そのあたりについては、グローバリズムvs.ナショナリズムの観点で説いている以下の動画をご覧いただきたい。
【馬渕睦夫】ついにこの時がきました。●●が終わりを迎えました【ひとりがたり/まとめ】
現在はグローバリズム陣営とナショナリズム陣営が、主導権を巡って鍔迫り合いをしているが、やがてナショナリズムが優位に立つだろうとする馬渕大使の発言に小生は同意するし、1929年のニューヨーク発世界大恐慌は、〝人為的〟なものであったとする馬渕大使の発言(8:58~)にも同意する。だから、冒頭の動画で横森一輝氏が言及している2023年世界大恐慌も、人為的に引き起こされるであろうということは想像に難くない。
ともあれ、NWOの世界になるのを防止するためにも、一人一人が目覚めていきたいものだ。
【グリコのおまけ】 上掲の動画で横森氏は、コンドラチェフ景気循環説を語っていたが、小生も掲示板「放知技」で紹介している。 https://grnba.bbs.fc2.com/reply/17349208/25/
また、コンドラチェフ景気循環説は78年周期だが、それよりも長い800年周期の文明循環説もあり、拙ブログで紹介済みだ。 800年周期
- 関連記事
-
スポンサーサイト
|