今回の記事では、「世界権力」vs.「ナショナリズム」という視座から、昨今の世界情勢について俯瞰してみたいと思う。
■世界権力 世界戦略情報誌『みち』の最新号(四月十五日号)の常夜燈シリーズで、執筆者の黒不動さんが「支那と日本は同文同種ではない」と題する、実に興味深い記事を書いていた。黒不動さんは同記事の冒頭で以下のように述べる。
▼米国とソ連という対立軸を中心として「冷戦時代」を構想した世界権力は今や「新冷戦時代」の対立軸として、米国の相手に共産支那を担ぎ出してきた。尖閣諸島周辺海域における日本領海への侵犯や南支那海域における軍事施設建設と空母の示威行動など、傍若無人の独断行動が突出している。香港問題などの国内問題でも従来採ってきた慎重な姿勢をかなぐり捨てて、強権発動へ転じたようである。もちろん、この支那の転身は国内の矛盾から対外問題へと人民の関心を逸らす為であるが、それには世界権力からゴーサインを得ることが不可欠で、世界情勢の新たな引っ掻き回し役を仰せつかった節がある。
〝世界権力〟という言葉が、二度にわたって登場しているのに注目していただきたい。過日、小生は「大英帝国の影」と題する記事を書いているが、同記事をはじめ、今までに23本の記事で〝世界権力〟について言及した記事を書いているので、読者は小生の〝世界権力〟観をある程度把握されていることだろう。今回は林千勝氏の云うところの〝世界権力〟を取り上げたい。
最初に紹介するのは、水島総氏と林千勝氏の二者による対談形式の動画である。
【今、世界はどうなっている?】林千勝×水島総 第1回「民族無き世界を目指す2つのグローバリズム~ロスチャイルド家とカール・マルクスの繋がり」
小生が度々ブログで記事に書いたり、掲示板「放知技」やブログ「正次郎のNewsToday」で投稿したりしていることだが、世界情勢を正しく読み取るには、自身の〝世界権力観〟を自家薬籠の物にしている必要がある。その意味で、昨今の国会議員が確たる政策が定まらずに左眄右顧しているのも、林氏が動画で述べているとおり、何等〝世界権力観〟を持ち合わせていないことによる。
さて、以下は上掲動画のワンシーンだが、林氏が作成したという図をじっくり眺めて戴きたい。

林氏の場合、世界権力をNWO(ニュー・ワールド・オーダー)、あるいはグローバリズムと定義しているが、小生の考える世界権力と重なる部位が多い。以下は、小生が上掲図を眺めつつ感じたことである。
図の左下にある「ソ連」という文字が、目に飛び込んでくることだろう。小生は拙稿「ソ連vs.ロシア」で以下のように書いている。
ロシア革命の影の主役の正体を知り、米ソ冷戦が出来レースだったことを理解するためのキーワードは、「ロスチャイルド」である。

次に、やはり図の左下に「中共」、そして図の右下に「アメリカ」という文字に目が行くことだろう。小生は「大英帝国の影」の冒頭で、3月18~19日(現地時間)の二日間をかけて行われた、アラスカ米中会談を取り上げているが、同会談についてNHKは、「米中外交当局トップの初会談 異例の非難応酬」と書いた。しかし、あの会談は米国と中国の背後に見え隠れする、林氏の言うところの「NWO」が、予め台本を書いた茶番劇に過ぎないこと、賢明な読者はすでにお見通しのことだろう。
結論として、上掲図の一番下に書いてあるように、「従順な地球市民」の完成に向けたNWOの企みが、成功しつつあると林氏は睨んでいるようだ。しかし、それに対抗している勢力が「ナショナリズム」であり、林氏が考えているように、スンナリとNWOの企みが成就するとはとても思えない。
■ナショナリズム 何故か? 改めて上掲図の右下に書かれている、「アメリカ第一主義弾圧」という言葉に注目して戴きたい。林氏は、゜トランプが仮に再選を果たした場合、まさに上記のNWOの企みが崩壊しかねず、それを恐れてNWOがトランプを潰した(大統領選に落選させた)」と述べていたが、概ね林氏の主張は当たっていると思う。
しかし、皮肉にも〝落選後〟のトランプ人気は衰えるどころか、むしろ日々目覚めつつある人々がアメリカのみならず、世界中も増加しているのが現実で、バイデン政権、米国民主党、ビッグテック、大手メディアといったNWOの鉄砲玉の化けの皮が、今やすっかり剥がれてしまった現実を、林氏はどのように説明するつもりだろうか・・・。ここで、拙稿「ナショナリズムの今」でも紹介した、以下の動画に改めて注目して戴きたい。
【馬渕睦夫】愛国者によるグローバリストへの逆襲【WiLL増刊号#298】
プーチンの写真が目に入るはずだ。このプーチンだが、人によって意見の分かれるところだろうが、現在のナショナリズムの精神的なリーダーは、プーチンであると小生は確信している。何故にプーチンが精神的リーダーといえるのか? 一例として、大分昔の記事になるが、拙稿「ヴァルダイ会議でのプーチン演説」を再読していただきたい。プーチンの演説を評した、ポール・クレイグ・ロバーツ氏の記事を小生は紹介しており、同氏は記事冒頭で以下のように述べた。
これ(プーチンの発言)は人道主義の政治指導者の言葉であり、これ程のものに、これまで世界はお目にかかったことがあるまい。プーチンを、ホワイト・ハウスにいる背徳的な戦犯や、ドイツ、イギリス、フランス、日本、カナダ、オーストラリアのトップにいる彼の傀儡連中と比較願いたい。そうすれば、犯罪者集団と、全ての人々の利益が尊重される、人情のある、住みよい世界を実現する為に努力している指導者との違いがお分かり頂けよう。
ちなみに、小生がプーチンについて言及したブログ記事は200本近く及ぶ。
ここで、現代のナショナリズムの精神的リーダーがプーチンとすれば、先の大戦時におけるナショナリズムのリーダーは、ヒトラーだったと小生は思うに至っているが、読者はどう思われるだろうか・・・
マルコポーロ事件というのが過去にあった。これは、1995年2月に文藝春秋が発行していた雑誌『マルコポーロ』に、ホロコーストを否定する内容の記事を、内科医の西岡昌紀が寄稿して掲載されたことで、世界中のユダヤ人による非難を浴び、同誌が廃刊に追い込まれただけではなく、当時の文藝春秋の社長や編集長が解任された事件だ。
当時と比べて時代も変わり、今や世界中の非難を浴びることも少ないだろうが、それでも依然としてデリケートなテーマであることに変わりはない。しかし、そのヒトラーを敢えて高く評価した記事を、「地政学と伝統玄密学」シリーズで連載しているのが、世界戦略情報誌『みち』の神子田龍山さんで、『みち』の四月一日号で以下のように述べている。
●政治的パフォーマーを離れた彼自身が個人的に求めていたのは、自然と和を以って一体化し、森羅万象の中に神を見出すシンプルで、汚れなく、明るく、穏やかな幸福の約束。それはまるでわが国に於けるアニミズムに近い古神道のような……。と言うよりも、日本への憧憬さえ露わにするその言葉は、既に「日本の宗教こそが最高だ」とヒトラーが信じていることを暗に示しているではないか。

小生はホロコーストを眉唾物と思っており、世間のヒトラー評について兼ね兼ね疑問に思っていた者であるが、今回の神子田さんが取り上げたヒトラーシリーズに目を通し、世間のヒトラー評が間違っているだけではなく、ヒトラーこそ当時のナショナリズムにおける精神的リーダーだったと、確信するに至っている。そして、何よりも神子田さんのシリーズで驚愕したのは、ヒトラーが実に深く日本精神について理解していたことだ。そのあたりを見事に証明してみせたのが、神子田さんの上掲記事ということになる。
それにしても、実に凄い記事だ。これは何も小生だけではなく、『みち』の天童竺丸編集長も同様だったようだ。尤も、天童編集長が感銘を受けたのは、ヒトラーのキリスト教観であったが、ヒトラーについて新たな人物像を肉付けできたという点では、天童編集長も小生も一致している。御参考までに、以下は同号に載った天童編集長の「巻頭言」である。

【追記】 実は、今回の「世界権力vs.ナショナリズム」を書くにあたり、下書き段階では江崎道朗氏の動画を引用する予定だったのだが、上掲の林氏の動画の方が、一層NWOとナショナリズムの対立を浮き彫りにしていると判断したので、急遽林氏の動画に差し替えたわけだが、江崎氏の動画も捨てがたいものがある。よって、以下は下書きしたままの状態ではあるが、本記事で紹介するつもりでいた江崎氏の動画、および小生が付記した簡単なコメントを併せて掲載しておこう。
米英で進むコミンテルン研究と情報史学 江崎道朗のネットブリーフィング 菟田中子【チャンネルくらら】
【コメント】インテリジェンス分野で頭角を現しつつある江崎道朗氏、最近注目している識者の一人である。その江崎氏が、情報史学を解説した動画をアップした。英国の狡猾さを情け容赦なく斬り捨て、かつ、愛国心に満ちた解説を行っている。そのあたりから、江崎氏は真のナショナリストということが分かる、一見の価値ある動画だと思う。
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