一昨日の拙記事「考える足」で、男はつらいよの「葛飾立志編」の一部を紹介したが、同シーンで寅さんが言い出した、〝己を知る〟が話題になっていたので以下に紹介しよう。その寅さんに対して、「寅、その、己を知るってのは、いったいどういうことだい?」と問うてきた、おいちゃんへの返答に窮した寅さん、博に助け舟を求めたところから以下のシーンが始まる。
寅 おい、博、おまえちょっと、おいちゃんに分かり易く説明してやれ。
博 難しい質問だなあ…
寅 だから分かり易くさ、

博 自分は何故、この世に生きてるのか…。つまり、人間存在の根本について考えるっていうか…

寅 根本についてか…、ん…、正しいかもしれないな…

社長 そんなこと考えて、なにか役にたつのかい?

博 もちろんですよ! そういうことを考えない人間は、本能のままに生きてしまうってのか、早い話が、お金儲けのためにだけ一生を送ってしまったりするんですからねえ…
寅 いやだねえ~

社長 それで、悪いのかい?
実は、このシーンを取り上げたのは、以下の動画を観たからだ。
【頑固亭異聞】正気を失った日本経済界の末路[桜R2/6/15]
経団連の会長と言えば、嘗ては超一流の人物が犇めいていたのを思い出す。小生が直ぐに名前を思い浮かべる人物だけでも、石川一郎、石坂泰三、植村甲午郎、土光敏夫、河野文彦、稲山嘉寛…。在野にも戦後の人物として、松永安左衞門、松下幸之助、本田宗一郎、藤沢武夫、盛田昭夫、井深大、 出光佐三と、綺羅星の如くいた。小生が実際にお会いしたのは本田宗一郎のみだったが、そんな僅かの体験だけでも、一流の人物はやはり違うと思うのである。それぞれ大企業を造り上げた人たちであり、加えて、自分の会社だけではなく、広く日本全体のことを考え、日本人の為に生涯を捧げた先達であった。
翻って、今の経団連はどうか。小生は昨今の経団連の会長をはじめとする役員が、どのような顔ぶれなのかは知らないので人物評価は控えるが、上掲の動画を観るかぎり、今の経団連という組織は、己を生み育んでくれた日本の将来について、あまり深くは考えてはいないように思えてならない。つまり、現在は米中対立という大変な時期に、我が国が直面しているのにも拘わらず、そうした世界情勢にはお構いなしに、中国に媚びて金儲けに走るといった、まさに猪突猛進という言葉がピッタシの組織が、今の経団連だと感じたのである。その意味で、「それで(金儲けだけの人生を送ることに)、悪いのかい?」という、タコ社長を今の経団連は笑うことができないだろう。
拙稿「米中衝突と半導体」でも書いたように、万一、ファーウェイを巡って5G戦争が米中間で一層激化し、米国が禁輸措置を強化して実際に発動したら、どうなるのということは経団連の役員を務めるほどの人たちなら、少なくとも頭の中では分かっているとは思うが、それでも中国に向かっての猪突猛進を止めることができないあたり、祖国の将来よりも金儲けを優先しているからであり、視野狭窄な人たちだと言うよりほかはない。
また、先日の人民会で中共が、香港に国家安全法を導入することを決定、この八月に正式に導入された場合、香港ドルと米ドルの交換の優遇措置を米国が廃止するという、最悪の事態が想定されるのであり、不幸にしてそうした事態に陥った場合、中国は香港と共に衰退の一途をたどっていくことだろうし、経団連の役員らは右往左往するしかなさそうだ。
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