前日に続いて、「洞察歯観のすすめ」をお届けする。第二弾の冒頭を読み、「アレ、第二弾は音楽論か…」と勘違いする読者も出るかもしれないが、今回も医学についての深いお話だ。通読し、改めて「自然治癒力」の凄さを見直した亀さんであった。そして、あの近藤誠医学博士が登場するので、がんに関心のある読者は今回も必読だ。
***「五郎君。医は仁術やない。医は算術や」*** 五夜連続でテレビ放映された「白い巨塔」リメイク作品。懐かしいタイトルに惹かれて、また、 「懐かしい昭和の俳優陣も登場するらしい」 そう友人から知らされ、雪国仕込みの酒をひっかけながら、みておりました。 先ずは気になったことが・・・いや、ビックリしたのは映像のバックで流れる音楽(テーマ曲)・・・ 物語が始まったと思ったら、いきなり、レッド・ツェッペリンとピアソラが何やらセッションでもしているのだろうか、というような音が飛び出し・・・そして、その流れるメロディの一部は、遠い過去にどこかで聴いたような。冷酒に酔いながら想いを巡らせていると、曇りガラスの向こうから記憶が浮かび上がってきました・・・。 その昔、SRI(科学捜査研究所)が、優れた科学捜査をもって、数々の化学を悪用した難事件、怪事件を解決していくという一話完結型の「怪奇大作戦」というテレビドラマがありました。記憶にありますでしょうか?(これは、ウルトラQに始まる円谷作品{空想科学ドラマ}のなかの一作品。ドラマの音楽づくりは、(玉木宏樹・山本直純によるもの)で・・・そのテーマ曲のメロディーとオーバーラップしてしまい、医学界の暗部を鋭く追求する社会派ドラマのBGMとしては、映像と音楽が、なんとも、かみ合っていない咬合不良を起こしているような。少々違和感をもちました。 怪奇大作戦という・・・子ども向けのテレビ番組(昭和43年~44年に放映)ではありましたが、昭和の時代の物語というよりは、近未来に起こるであろう怪奇な人間ドラマを描いていたように感じられます・・・かえって、今の時代にマッチしており、興味深くみることが出来るかも知れません。 色濃く記憶に残っているところでは、「狂気人間」というタイトルのエピソードがありました・・・ ###連続して複数の殺人事件が起こり、犯人は逮捕されるも、精神鑑定の結果、狂人であると断定され病院に隔離される。ところが、数ヶ月の後、狂人であったはずが、正常な精神を取り戻す・・・事件を起こした狂人たちの影に、脳波変調機なるものを使用して人間を一時的に精神異常者に仕立て上げる。狂わせ屋の存在があった・・・ここに、刑法第39条「心神喪失者の行為は之を罰せず」を絡ませた、25分ドラマ作品### これが茶の間に流れたわけで・・・およそ、よい子たちがみるテレビ番組とは、ほど遠い内容だったと思いますが、今の時代にみるならば、しっくりくるかも知れません。
ドラマが一夜、二夜と・・・(白い巨塔の物語が)展開していくなかで、どういうわけか、もう一人。音楽家の名前が浮かび上がってきました。宮内國郎です。 宮内國郎は、映画やテレビ番組の音楽作りをしていた作曲家ですが、円谷作品である「ウルトラQ」「、「ウルトラマン」の音楽を担当していた人物です。と言えば、メロディーが浮かんでくるのではないでしょうか。 白い巨塔、ドラマ上で効果音的に使用される短いメロディ・・・を少々注意深く(酔っ払いながら)聴いていると、これが、宮内國郎を思わせるものが鏤められており、社会派ドラマであるはずが、突然、アンバランスゾーンへと誘い込まれ、マンモスフラワー(ウルトラQ)でも登場したのかと錯覚してしまうほどでした。また、宮内國郎スタイルの音に加えて、タンジェリン・ドリームであったり、ヴァンゲリス・パパタナシューといったミュージシャンのサウンドを薄味にして、ふりかけにしたような音作りも感じられ・・・おかげで、懐かしい昭和TVの一コマを、あれこれと思い出す楽しい暇潰しが出来ました。 ついでながら、山崎豊子原作の「白い巨塔」。昭和においては、田宮二郎・主演。音楽は渡辺岳夫。平成には唐沢寿明・主演で、音楽担当は加古隆でした。ドラマ上で流れていたテーマ曲など記憶にありますでしょうか? 平成ヴァージョンにおいては、テーマ曲が、ニュージーランド出身のヘイリー・ウェステンラが歌う「アメイジング・グレース」でした。メロディーを聴くとドラマの一場面を思い出す方もいるでしょう。ヘイリーの透明感溢れる歌声とメロディーの印象が強烈で、加古隆の魅力が少々薄味に聞こえてしまった感じがありましたが、案外、音で視聴率を稼いだ作品だったのかも知れません。 昭和ヴァージョンでは、渡辺岳夫が重厚なインスト曲でドラマに色を添えておりました。渡辺岳夫・・・というと、少々気に掛かる作曲家なのですが、以前、渡辺岳夫をここで紹介したことがありました。 「~思い込んだら~試練の道を~ゆくが男の~ど根性~」 「巨人の星」や、「アタック・ナンバーワン」などの作曲者でもあります。
ーーー外科医は よく知っているーーー
さて、ドラマを見ていて、ある場面で、ふと近藤誠氏の顔を思い出しました。 浪速大学医学部付属病院の内科診察室(診察室のナンバーが13番だったような)。、 内科の里見脩二と、外科の財前五郎が患者を前に治療内容を説明する場面。 財前が、患者に、 「膵臓がんです。こんなに早期に発見されることはまず無いほどの小さいものです。手術でがんを摘出すれば、心配ありません。他に方法はありませんよ」 と話す。手術するしかないと言われ言葉を失う患者に、里見が、 「膵臓は沈黙の臓器と呼ばれ、見つかったときはかなり進行しているケースが多いものですが、早く発見できたのは、財前先生のおかげですし、彼は僕が一番信頼している外科医ですから・・・」 と、がん摘出手術を勧める。
このような場面において、近藤誠氏ならば、なんと言うでしょうか・・・ *** 「手術しか方法が無い」「がんを取りきれるし、再発もしにくい」 がんと診断されて、頭が真っ白になっている患者さんに、医者はしょっちゅうウソをついて、手術に誘導します。***
***膵がん(膵臓がん)は、「見つかったときは手遅れ」「がんの王様」と恐れられ、手術した3820人の5年生存率は、わずか9.2%(全国がんセンター協議会調べ)。しかも、元気な人が検査で膵がんを見つけられ、すぐに亡くなる悲劇が多すぎます。 膵臓にメスを入れず、様子を見たら意外におとなしく、転移もなかなか出てこなかったという人を数多く見ている。また、ある外科医は、手術をバンバンやり、一時は抗がん剤治療も一手に引き受けていたものが、苦しみ抜いて死ぬ患者さんを何千人も見て、「がんは自然に任せた方が、ラクに長生きできる」と方向転換。 「がんの治療は一切しません。痛みや呼吸苦はモルヒネなどでしっかり抑えます。すると、最後まで自分らしく、治療するよりずっと長く生きられることが多い」***
医者は、切りたいがために、手術するようにと誘導する・・・ところが、医者ががんになった時、また、医者の家族が、がんになった場合はどうかというと、財前教授のように 「すぐ手術して摘出しましょう。他に手だてはない」 とは、必ずしもいわないようで・・・
近藤氏の話を続けます。
***がんはステージ1~4までは全部、切らないほうがいい。僕は患者さんにいつもそう伝えています。外科医は患者のがんを、どんどん切りますが、自分や家族ががんになると、話は別だったりします。 外科の食道がん手術班のリーダーが、「母親の食道がんの放射線治療をして欲しい」と頼みに来たことがあるし、がんの手術で名を上げて大病院の院長になった同僚は、自分自身が大腸がんになると、何年も放置していました。切るとどれだけ痛み、苦しむか。早死にしやすいか。消化器(食道 胃 大腸)のがんの手術は特に、どれだけ体を弱らせるか。外科医はよく知っている。 「がんは切るもの」 「切れば移転しない。治る」 「一刻も早く切って捨てたい」 これは日本では特に大きな思い込みです。がんの治療を外科が先導してきたため、「まず手術」とみんなが信じ込み、死者の山が築かれてきた歴史があります。 話は19世紀に遡ります。1881年、オーストリアの外科医、ビルロートが世界初の胃がん手術に挑みました。患者はたった4ヶ月で逝き、続く手術でもバタバタ死んだのに、 「世界で初めてがん手術に成功」 という大ニュースは地球を駆け巡り、 「患者はお亡くなりに」の部分は巧妙に隠されました。 それから140年、今も医学生は、「ビルロートが世界初の胃がん手術に成功」と教えられ、医学者も患者も「がんは切れば治る」と勘違いしたまま、命を縮める手術が繰り返されています。***
***切ると、どれだけ苦しみ、早死にしやすいか・・・外科医はよく知っている。
「手術をすると、がんが暴れる」 「がんが空気に触れると怒り出す」 外科医たちは昔から、仲間内では、よくそう話していました。***
外科医は、よく知っている・・・わけです。 財前教授も第一外科の医局内で、手術をすると、がんが暴れ、苦しみ早死にしやすい。そのような話をしていたのでしょうか。
近藤氏の話をもうひとつ。自然治癒力について・・・ ***あなたの体の中には最高の名医がいる。その名医とは、 あなたの体に生まれたときから備わっている「自然治癒力」のこと。人間誰でも、そしてどの生物にも、虫や猫や犬でも、植物にも、自然治癒力(自然良癒力)があります。自然治癒力とは読んで字の如く、放っておいても自然に治る、生体に備わった治癒力により病を治す力のこと。私たち人間の身体は、誰でもみんなこの自然治癒力で守られています。風邪だけでなく、口内炎、胃潰瘍、肝炎、湿疹、切り傷などのすべての不調は受診しなくても自然治癒力で治るのです。 これらの症状が治癒するのは、医師や薬が治しているわけではありません。医師はほんの少しのお手伝いをしているだけで、あなたの身体が持つ自然治癒力のおかげで自然に治っているのです。
ーー追記ーー
「五郎君。医は仁術やない。医は算術や。うちみたいな開業医が、なんぼ千客万来の患者があっても、月末の保険点数の計算がヘタやったら、商売にならへん。この保険点数の算術こそが個人病院の命や」 財前五郎と義父の又一とのやり取り・・・この場面、印象に残るところですが、みている間に、田宮二郎と曽我廼家明蝶の姿が思い出されました。 また、今回のリメイクで意外な昭和の顔が登場しておりました。迷曲?「うぐいすだにミュージックホール」を歌っていた落語家ですが・・・! ”””リメイク作品・・・最終回で、ちょっとビックリしたことが。「リリーマルレーン」が、さりげなく流れておりました。マレーネ・ディートリッヒの顔が浮かび上がってきます。 確か昭和の時代。大阪万博のイベントで来日して、ファンを熱狂させたと記憶しておりますが・・・マレーネ・ディートリッヒ。その妖艶なる瞳に魔物が取り憑いていたのかも知れません。ディートリッヒの一人娘が、貴重な記録を残しております・・・酔いが程よく回っているせいか、その題名が思い出せません・・・”””。 酔いが回ったところで、「リリーマルレーン」を聴きながら寝るとします。
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