前稿「ミヌシンスク文明 01」において、〝文明発祥の地はシベリア〟と述べたが、それを踏まえて本稿を続けよう。『栗本慎一郎の全世界史』の第三章、「人類文化の起源地・ユーラシア」には、前稿では触れなかった他の重要なポイントが、実はもう一つ書かれている。それは、同章の『■「移動」と「金属」が根本特徴』で言及している、鉄である。
要するに、われわれが重要視すべきことは二つ、移動と金属だ。
この二つが南シベリア文明の根本特徴として存在じていた。
南シベリアの草原と雪の中における文明は、船や馬や馬車での移動と金属の積極利用の姿勢を人類史に持ち込むものだったのである。 『栗本慎一郎の全世界史』p.79~80
ここで、栗本氏の謂う「金属」とは鉄を指しているのだが、今回はこの鉄について少し言及しておきたい。なぜなら、前稿「ミヌシンスク文明 01」で言及した以下の記述と深く関連してくるからだ。
・茅葺 ・シャーマニズム
最初に、世界戦略情報誌『みち』(平成27年4月15日)に掲載された、天童竺丸さんの「古代祭祀の中核は鉄の生成を願うことだった」を、本稿の【補足1】に転載したので目を通していただきたい。特に、赤線を引いた二ヶ所は重要である。最初の赤線「神事を以て鉄の生成を神に乞い願った」は、鉄とシャーマニズムの深い結びつきを示すのだし、次の赤線『「葦刈製鉄」と「稲作農耕」という両者が渾然合体したのがわが日本』は、鉄を生成する葦原、すなわち葦刈製鉄について言及しているからだ。
斯様に、葦と鉄との結びつきは我々が想像する以上に深かった。豊葦原瑞穂国という言葉は祖国日本を指しているが、亀さんは瑞穂は稲穂であることは分かっていたものの、何故に豊〝葦〟原なのか今まで気になっていた。それが、「古代祭祀の中核は鉄の生成を願うことだった」を読み、漸く腑に落ちたという次第である。そして、栗本氏も鉄に注目していたことは、『■「移動」と「金属」が根本特徴』と題した小節からも窺い知ることができるのだ。
一方、鉄ひいてはそれ以上に重要である卜(うらない)の対象が、戦略あるいは外交であり、国家の命運を左右する判断を下さねばならぬ時であった。そして、その卜が今日の日本にも引き継がれていることを思い出すべきで、そのあたりは飯山一郎さんも以下の記事で述べている。 平成天皇ご即位の際にも亀卜が行われた…
古代人は現代人よりも遥かに深く、自然というものを身を以て知っていた。そうした古代の人々が自然から受け取る情報のアンテナは、現代人のそれよりも格段に鋭く優れていたのだ。そうした自然の情報を受信する古代人のアンテナは、日々自然と接していくなかで磨き上げたアンテナだったとも言える。一方で、現代に生きる我々のそれはひどく錆びついている。それは、科学が「科(とが)の学問」であることを考えれば、我々のアンテナが錆びついてしまったのも無理もないと言えよう。
世界戦略情報誌『みち』の執筆者と読者を対象に、池袋で毎月一回行われている「まほろば会」、現在は安西正鷹さんが中心となって講話を進めているが、毎回まほろば会の後に安西ファイルを送ってくれるのは大変有難い。その安西さんが先月行われたまほろば会で、配布したという安西ファイルを数日前に送ってくれた。テーマは「仮想通貨からお金と経済のあり方を再考する(後編)」で、仮想通貨リップルについて鋭く切り込んだ、実に優れた論文だったので、思わず目を見張ったものである。この貴重な論文はいずれ『みち』に掲載されると思うので詳細は割愛するが、実は論文の結末に、リップルの考察以上に重要な〝安西メッセージ〟が書かれていたので、以下に引用しておこう(下線は亀さん)。
・これは空疎な精神論ではない。物質世界と精神世界に跨る半霊半物質的な、新しいジャンルの科学理論に基づく考えである。すなわち、来るべき新しい文明の精神哲学ともいうべき量子力学に基づく真理なのだ。 仮想通貨からお金と経済のあり方を再考する(後編)
量子力学の台頭で従来の科学が崩壊しつつあり、次の文明原理に人類は進みつつあるのだが、それは、精神世界の古代人から、物質世界の現代人を経て、精神世界と物質世界が融合した世界へ向かう過渡期にあるとも言い換えることができ、量子力学をきっかけに世界の精神構造が変わりつつあることを、安西さんは述べている。ともあれ、古代人の持っていたアンテナ、自然に対する観察眼が如何に凄かったか、そのあたりについては以下の記事からも容易に想像できよう。 古代の「科学」 記事にもあるように、4~5万年前の我々の祖先が持っていたと思われる、研ぎ澄まされた自然観察眼、それから得るインスピレーションとは、どのようなものだったのか、一度は思索を巡らせてみる必要がありそうだ。それが、シベリアの大地に生きた、そして今でも生きているツランの心に迫る、第一歩だ。
なを、別号の同誌で取り上げていた、土師氏についての言及も重要である。たとえば、平成27年8月1日号の『みち』に掲載された、「土師氏・土師部による古墳築造と国作り」(平成27年07月01日)と題する記事には、以下のような記述がある。
土師氏・土師部が陶工・鉄工集団であると同時に、巫覡・巫女を輩出するシャーマン集団だった
その土師氏については、実に興味深い記事が多いのだが、まだ公開されていないのは残念である。
みち426号(平成27年05月15日) 大和は一大製鉄地帯だった みち425号(平成27年05月01日) 土師氏は製鉄神兵頭の部民だった みち424号(平成27年04月15日) 古代祭祀の中核は鉄の生成を願うことだった みち423号(平成27年04月01日) 葦刈製鉄はホントにあったのか? みち422号(平成27年03月15日) 「鈴生」と地名「三碓」の語源 …中略… みち431号(平成27年08月01日) 土師氏・土師部による古墳築造と国作り みち430号(平成27年07月15日) 鍛治師とシャーマンと陶工とは血の兄弟だった みち429号(平成27年07月01日) 土師氏とは渡りの陶工鉄工集団だった 巻頭言
加えて、飯山史観を編集している身として目を引いたのが、8月1日号の表題にある〝古墳築造〟であり、前方後円墳について今の日本で定説となっている大和発生説の他、定説に異を唱える加古樹一氏の説を同記事では紹介している。そしてわかることは、加古氏は古墳築墓はニギハヤヒ系の土師集団と考えていたということだ。だが、前後して飯山一郎さんが。古墳の原型は九州にありという、南九州古墳誕生説を発表しており、このあたりは応神天皇の御代を編集するにあたって、改めて見直し作業を行う予定である。
ともあれ、ミヌシンスク文明について書きたいことは他にも多々あるものの、先(飯山史観の編集)を急ぐため、ミヌシンスク文明についてはこのあたりで切り上げ、次稿では北満州と日本列島について筆を進めていく予定である。
 ゲルマン人も出自はシベリアの遊牧民族!
【補足1】

 古代祭祀の中核は鉄の生成を願うことだった 世界戦略情報誌『みち』(平成27年4月15号)
【補足2】 一口にミヌシンスク文明と言っても、それは三期あるいは五期に分けられると、平成28年10月1日号の世界戦略情報誌『みち』で天童竺丸編集長が述べている。ご参考までに、該当の記事を以下にアップしておこう。

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