前稿「アルゼンチンで思ふ(4)」を公開してから、大分間が空いてしまった。帰国以降、様々な雑用が増えてしまったためだが、気候も涼しくなったこともあり、このあたりで気を取り直して再開といこう。今回はアルゼンチンの経済について、思うところを書き連ねてみた。
■どっこい、おいらは生きている 高名なエコノミストが、アルゼンチンについて以下のように揶揄したことがある。
世界には4つの国しかない。 先進国と途上国、そして、日本とアルゼンチンである。 経済大国から転落したアルゼンチンのGDPと経済史
これは、ポール・サミュエルソンといった経済学の大御所の言葉だが、かつて亀さんも耳にしたことのある言葉で、懐かしく昔を思い出した次第である。それはともかく、アルゼンチンの経済について、同記事が以下のように形容しているのに注目されたい。
50年ほど前までは、世界で指折りの富裕国でした。平均6%もの経済成長率を30年連続記録したこともあり、国民一人あたりのGDPは世界第4位と南米でも屈指の経済大国でした。
豊かだったアルゼンチンのその後だが、40年前(1979年)に日本を訪れ、亀さん宅に半年滞在したアルゼンチンの親友の一人、シルビアが発した言葉が未だに耳に残っている。それは、当時のアルゼンチンの経済について、語り合っていた時だったと記憶している。普段は陽気なシルビアが、珍しく語気を荒げて反論してきた…。
亀さんは、アルゼンチンが後進国だとでも言うの?
当時のアルゼンチンは、どのようだったのか、ウィキペディアから引用しておこう。
1976年3月26日に軍事評議会がクーデターを起こし、陸海空三軍の推薦によりホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍が大統領に就任すると、アルゼンチンにも再び軍事政権が樹立された。ビデラ政権はこれまでの軍事政権とは異なり、「汚い戦争」を対ゲリラ戦略として採用し、反体制派、およびゲリラとみなされたものを非合法的な手段で徹底的に弾圧した。これにより、主だった都市ゲリラは壊滅し、治安維持に大きな成功を収めたものの、この過程で秘密裏に「行方不明」になった者は9,000人から30,000人にも上り、国民統合に大きな禍根を残した。
「行方不明者が9,000人から30,000人」という記述に注目されたい。1979年という時期は、シルビアにとって祖国に身を置くことは、「行方不明者」の一人にされかねない、極めて危険な状況下にあった。そして、それこそが日本に身を寄せた最大の理由だったのである。
その後はマルビナス戦争を経て軍事政権が崩壊、民政に移管したわけだが、結果的に中産階級の多くが没落、アルゼンチン経済は奈落の底に突き落とされた。当然ながら民衆の怒りが爆発、紆余曲折を経て、2003年に正義党のネストル・キルチネル政権が誕生したというわけである。しかし、政権を担当したキルチネル夫婦が、アルゼンチン経済の立て直しに失敗、末期に至っては汚職まみれの政権へと堕落していった。
シルビアが日本に身を寄せていた1979年当時、軍事独裁政権以外に年間5000%という、ハイパーインフレーションがアルゼンチンを襲ったことも指摘しておきたい。同国で起きたハイパーインフレについては、以下の記事に詳しい。 繰り返される「国家破綻」アルゼンチンの事例に学ぶこと
なお、マルビナス戦争後のアルゼンチン経済を把握する上で、上の記事は参考にはなるものの、日本経済についての見方が根本的に間違っている点も併せて指摘しておこう。
現在、日本の借金は1000兆円を超え、毎年絶え間なく利子が増え続けています。その上、ここ数年の財政赤字によって、その借金は数十兆円ほどに膨れ上がっているのです。今後しばらく進行する日本経済の赤字は、例え消費税を10%に引き上げたとしても賄いきれないと言われています。また、少子高齢化が深刻化しているため、今後、GDPが増えて、税収が増える見込みもありません。国債の暴落により、「日本経済の財政破綻が起こるのでは」との声も聞かれるようになってきています。各経済評論家によって多様な見解がありますが、日本は今後、投資先としても、企業発展と言う視点で考えても、期待度の低い国となりつつあるのです。
掲示板「放知技」の読者で、メスペサド理論を解する読者であれば、嗤って読み飛ばすことができる行だろう。 http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16492748/592/
再び最初の記事、「経済大国から転落したアルゼンチンのGDPと経済史」に戻す。筆者はマクリ政権について以下のように書いているのに注目されたい。
2015年に実施された大統領選挙では、野党中道右派のマウリシオ・マクリ候補がペロン党候補を僅差で破り、政権交代が実現しました。マクリ政権は、経済運営の正常化を目指しており、アルゼンチン経済は漸く健全化する見込みです。
また、アルゼンチンに並ぶ経済大国であるブラジルでも、左翼政権が2016年に崩壊し中道政権が発足しました。南米の経済大国の政変をきっかけに、今後は、他地域との協力を拡大するなど活性化するものと期待が高まっています。
しかし、ハイパーインフレや債務不履行を、幾度となく繰り返してきたアルゼンチンだけに、再び、引き起こす可能性が高いことには注意が必要です。確かに、経済大国になりつつありますが、それが完全回復と安心できるものとは言い切れません。
それをチャンスと見る動きもあります。アルゼンチンの主要輸出品目には、小麦やトウモロコシ、牛肉、そして、近年、ブランド化が進んでいるアルゼンチンワインもあります。また、工業面でも、天然ガスが有望視されています。
そう、アルゼンチンには小麦や牛肉、さらには有望な天然ガスがある。これにより、アルゼンチンが再びハイパーインフレに見舞われるようなことがあっても、庶民は逞しく生き残っていけるはずだ。そして、同記事の以下の結語…。
国際的な信用がなくなっても、孤立しても、アルゼンチンは生きています。国民は、伝統のタンゴを踊り、夜にはしゃれたバーでワインを楽しむ。そういう国です。
まったく以て同感!
 食べて飲んで…
 踊って…
 歌って…
 犬と戯れる
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