シリアを巡る中近東紛争で、ロシアがIS(ISIL)を壊滅状態に追い込むことができた理由は、IS、そしてISの背後にいるアメリカの軍事力よりも、ロシアのそれが遙かに上回っていたからである。ところが、そうした現実を無視するかのように、未だにロシアと一戦を構えようとする一部勢力(ネオコン)が、アメリカ国内を引っ掻き回している。そのあたりについて参考になるのが以下の記事だ。 明日という日がこなくなるかも知れない
そんな折、ブログ「中東TODAY」の佐々木良昭氏が、「何故同一時にサウジアラビア非難」と題する興味深い記事をアップした。アメリカの圧力により、サウジアラビアがISを支援してきたことは、今や世界の常識の一部となっているが、サウジ同様にISを支援しているのがカタールだ。ところが、同国のハマド・ビン・ジャースム元首相が、そのサウジを非難したとする同記事の以下の指摘は意味深長だ。舞台裏で何があったのか?
*ムハンマド・サルマン皇太子は『サウジアラビアはこれから、本来の穏健なイスラムに復帰する。』と語り、暗にワハビー派を非難しているのだ。イラクのハーデイ・アーメル司令官の発言は、まさにワハビズム非難であり、カタールの元首相の発言も、ワハビズムに基づくIS(ISIL)非難を、しているのではないか、ということだ。*
つまり、「本来の穏健なイスラムに復帰する」ことを目指しているサルマン皇太子を、カタールの元首相が支持しているということである。皇太子の「穏健なイスラムへの復帰」とは、サウジ王室に対して一定の勢力を保持してきたワハビー派の切り崩し、すなわち、ワハビー派の勢力を弱めるということであり、これは同時にワハビー派の戦闘員が多いISと敵対することにも繋がる。ここで、サウジ王室とワハビー派との関係だが、やはり佐々木氏の以下の記事が参考になる。 サウジアラビアで危険な大変革が始まった
今まではアメリカに忠実だったサウジが、ここに来てアメリカの意向に逆らうような言動が目立つようになった背景に、ロシアの影がちらつくのだが、以下、プーチン大統領、サルマン国王、サルマン皇太子の動きを中心に、一連のニュースを時系列で振り返っておこう。
■サルマン国王 2015年1月23日、アブドラ国王の死去に伴い、サルマン皇太子が新国王に即位、同時に、王位継承順位第2位だったムクリン王子を皇太子に指名。 https://jp.reuters.com/article/saudi-succession-idJPKBN0KV2T820150123
2015年4月29日、サルマン国王がムクリン王子を解任、副皇太子のムハンマド内相(55)を新たな皇太子に指名。 https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H24_Z20C15A4FF2000/
2015年11月16日、G20サミットでプーチン大統領とサウジ国王が二者会談。 https://jp.sputniknews.com/politics/201511151169131/
2017年6月21日、サルマーン国王の勅命によりムハンマド皇太子が解任され、サイマル副皇太子が皇太子に昇格。 https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H6P_R20C17A6EA2000/
2017年10月5日、ロシアを訪問したサウジ国王と会談を行ったプーチン大統領。
 http://www.sankei.com/world/news/171006/wor1710060005-n1.html
■サルマン皇太子 2015年6月18日、当時は未だ副皇太子だった現サルマン皇太子と会談を行ったプーチン大統領。
 https://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39478364.html
2017年6月21日、王位継承者として皇太子に昇格。 https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H6P_R20C17A6EA2000/
2017年10月5日、ロシアを訪問したサウジ皇太子と会談を行ったプーチン大統領。
 https://jp.sputniknews.com/world/201710094165267/
また、以下の記事にも注目していただきたい。サウジの米ドル離れを報じた記事だ。 進むドル離れ。サウジアラビア、中国との取り引きに人民元とリヤルを使うことに
サウジだけではない。イランやベネズエラといった国も米ドル離れに進みつつある。こうした一連の世界的な米ドル離れは、米国覇権の凋落を意味しており、以下の記事が詳しい。 ロシアと中国間の金取引 - ドル離れに向けて前進?
【関連記事】 サウジ王室に関して、亀さんは以下の記事を書いている。 サルマン皇太子の肚 サウジ国王の肚
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