人の一生は四季に喩えられることが多いが、この人生と四季について考えを巡らす時、亀さんが必ず紐解くのが、『草木の本』(文 湯浅浩史 写真 木原浩)である。同書については、拙稿「我家の植物図鑑」でも紹介しているが、この機会に改めて人生というものを振り返ってみた。
光琳社の『草木の本』(文 湯浅浩史 写真 木原浩)という、今や絶版となった本がある。全ページがコート紙という贅沢な本で(値段も3200円と高価)、それぞれのページに美しい植物の写真が載っている。ご先祖様の調査に欠かせない研究対象の一つが家紋だが、その家紋のベースとなっているのが実は植物なのだ。その点、『草木の本』は一種の植物図鑑となっているだけではなく、各々の植物が関係する、伝統、神事、古典などが、いつの間にか頭の中に入っているという魔法の本で、今や亀さんのご先祖様の調査に欠かせない本となっている。

■春
 『草木の本』 ツクシ p.15
『草木の本』は、春の三月からページが始まる。まさに、春は新しい命が芽吹く季節、荒涼とした何も無かった大地から、若芽が小さな顔を覗かせ、それがグングンと成長していく様は、赤ん坊がこの世に誕生し、可愛い盛りの幼児期を過ぎ、小学校、中学校、高校、大学へと進むにつれ、集団生活の中で社会性を身につけ、知識を習得していくのにも似ている。やがて、親元から巣立つ二十歳の頃、本格的な夏を迎えるのである。
■夏
 『草木の本』 ヒマワリ p.86
人生で最も輝いている季節だろう。あたかも夏のヒマワリの如く、暑い夏を楽しんでいるかのようだ。年齢的には二十歳から四十歳の頃。「人生とは何ぞや」などと、振り返る余裕もなく、只、ひたすら仕事や家庭に没頭する季節だ。夏は、草刈り、塩撒き、乳酸菌液撒き、土の鋤きなど、秋の収穫に向け、汗水垂らして一所懸命に働く季節なのである。
■秋
 『草木の本』 イネ p.112~113
若い頃は徹夜の一つや二つ、苦にもならなかったのに、いつの間にか身体の衰えを感じるようになるのが四十歳過ぎあたりからで、秋の入口に差しかかったのである。人生の折り返し点だ。春に種を撒き、夏に畑仕事で汗水を垂らしていたかと思っていたら、いつの間にか、稲が黄金色に染まっているのに気づく自分がいる。今までの苦労を収穫する季節の到来だ。その稲刈りを終えると、過去を振り返る心の余裕が生まれてくる。畑仕事(子育て)から解放され、ようやく自分の時間を持てるようになったのだ。
同じ秋でも、亀さんの場合はすでに晩秋を迎えているのだが、そのあたりの心情を掲示板「放知技」で告白している。
お互いの人生は晩秋の季節を迎えていますが、楽しい晩秋と冬の季節を過ごしませう。そして、眠るようにあの世へ旅立つことができれば、最高に幸せです。 http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16074479/50/
■冬
 『草木の本』 キリ p.152
人生五十年と言われていた信長の時代ならいざ知らず、今や男女とも平均寿命が八十歳前後に延びている(フクイチ事故による内部被曝は取り敢えず脇に置く)。だから、人によって異なるが、晩秋から初冬にかけての季節は、還暦を迎えた六十歳から七十歳前後あたり…。そろそろ身辺整理という終活(人生の終わりのための活動)の季節に入ったのだ。また、人生の先輩として、若い人たちにお節介を焼く爺さん婆さんになる季節でもある。
もし奇跡が起きて、時間が戻せるなら、今度は、ゼッタイに後悔しないように、自分の思うように生きてみようって思ったんです。 お節介爺さんと婆さん
読者の皆さんにおかれては、悔いのない人生を歩んでいただきたい、と心から願う。
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