
一週間ほど前、近所のコンビニへ『ビッグコミック』を買いに行ったところ、『週刊現代』(3月11日号)の特集「病気は早く見つけるほど早く死ぬ」に目がとまり、一緒に買い求めた。帰宅して早急に同特集に目を通してみたが、内容的には拙稿「病院に行くと殺される! その2」で紹介した、諸情報を超えるものではなかった。よって、本稿では同特集に掲載された六つのテーマの見出しを紹介するに止めたい。
病気は早く見つけるほど早く死ぬ ・「前立腺がん」は見つけないほうが長生きする。 ・「胃がん・肺がん」検査は被曝するだけ ・「大腸ガン」の内視鏡検査は10年に一度でいい ・血圧を下げすぎると認知症・脳梗塞に ・「血糖値」を下げれば下げるほど死亡率が高まる ・「脳動脈瘤」はMRIで見つけたほうが早死にする

さて、同誌で五木寛之の「青春の門」や「名優志村喬を語ろう」といった興味深い記事を読んでいたところ、「安倍官邸が掴んだ 金正恩はもう死んでいる」と題する、面黒い記事が載っており、呆れてしまった次第である(嗤)。だが、それ以上に呆れたのが佐藤優氏の記事であった。過日の拙稿「面従腹背」で紹介した佐藤優氏の『政治って何だ! ? 』は、マックス・ウェーバーの『職業としての政治』入門書として優れた著作だとは思うが、如何せん佐藤氏は国際政治の深奥を上辺でしか語っていないため、国際情勢についてトンチンカンな記述が多い本であった。例えばIS(イスラム国)。このISを立ち上げたのは米国であるというのは、今や世界の識者にとって常識の部類に属すというのに、何故か佐藤氏はそのあたりについて何等触れていない。このあたりがまことに不思議であった。
ともあれ、『週刊現代』に載っていた佐藤氏の「名著、再び」(第28回)という記事、佐藤氏の限界を見た思いをしたので、参考までに件の記事、「金正恩はなぜ金正男を殺したのか?」を本稿の最後に載せておこう。同記事は二ページにわたる記事なのだが、特に一ページ目に引いた赤線の記述に注目していただきたい。以下は赤線の箇所に対する亀さんの感想である。
・佐藤氏は「北朝鮮は暗殺作戦の発動に踏み切った」と書いており、あたかも金正男がマレーシアで暗殺されたと信じ込んでいるようだが、事実は「金正男は死んでいない! 死んだのは金哲(キム・チョル)」である。 ・佐藤氏は「北朝鮮の事実上の後見国であった中国」と書いているが、〝中国と北朝鮮の関係の深奥〟について全く分かっていない。第一に、北朝鮮は大日本帝国陸軍の残置国家であり、その北朝鮮に対して胡錦濤が6年半前、吉林省を訪れて金正日と首脳会談を行っている。そのあたりは世界各国のメディアも報道しており、公の事実だが、どのメディアも底が浅いといった感があった。たとえば日本語版のニューズウィーク誌の場合、「胡錦濤を呼びつけた金正日」と題する記事を掲載、結語として「ひょっとして今回の訪中、将軍様親子のちょっと遅めの夏休み旅行だったのかもしれない」といった、実にノーテンキなことを書いているのには嗤う他はなかった。ともあれ、吉林省で胡錦濤と金正日の会談が行われた本当の背景については、飯山一郎さんの著した『横田めぐみさんと金正恩』(三五館)の小節「金正恩と胡錦濤のキズナ」(p.92)に目を通せば分かる。

・佐藤氏は「(米国は)北朝鮮に対する姿勢を硬化させた」と書いているが、拙稿「瀋陽軍区の正体」にも書いたとおり、北朝鮮と瀋陽軍区が一枚岩であることを佐藤氏は知らないようで、かつ、その一枚岩の持てる軍事力は、今や米軍の軍事力を遙かに凌駕しているのも知らないようだ。よって、今の米国は北朝鮮に対して、「態度を硬化させた姿勢」を示すのが精一杯で、米軍が北朝鮮に対して軍事行動に出ることはあり得ない。万一あるとすれば、コテンパンに打ちのめされるのは北朝鮮ではなくて、米軍の方となる。
このように、現在の米国と北朝鮮の関係は、まさに「蛇に睨まれた蛙」という諺が、ピッタシ当てはまるのだ。この機会に正確な北朝鮮観を身につける意味で、『横田めぐみさんと金正恩』の一読をお勧めしたい。


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