
昨日、ふと家の庭先に目をやると、早春の野花が咲いているのに気づいた。この時期になると、人生の節目を迎える人たちが多いと思うが、拙宅でも息子が大学を卒業、世の荒波に向けて間もなく出航する。よって、息子を含め、これから社会に巣立とうとする若者に向け、柴錬(柴田錬三郎)の〝円月説法〟を贈ろう。柴錬は〝出世〟について、以下のように語った。
真の出世とはどういうこと? 僕の親父は中学校卒ながら、いまでは小さいながら、社員三十人を使う会社の社長をやっています。苦労をして今日の地位を築いたせいか、二言めには「お前も私のように出世をしなければいかんぞ」といいます。先生、僕はときどき疑問に思うのです。社会的には地位と名誉を得て、財産を残した人を、出世したといいますが、本当の出世とはどういうことなんでしょうか。(東京都世田谷区 K・K 20歳 学生)
柴錬 これはなかなかいい質問ですよ。一般にはね、財産をのこしたり地位や名誉を築くのが出世のように思われているが、これは低級きわまりなき出世だな。
編集部 出世にも低級と高級の別が……。
柴錬 ある。高級な出世というのは、精神的な意味のもので、自分に納得する人生を送ることだ。例え貧しくてもだね、自分がこれでよしと思う人生を送っておれば、これは素晴らしい出世だ。男だったらこういう高級な出世を目指すべきだな。
編集部 天才といわれる人達はどうなんで。
柴錬 天才は生まれながらにして、高級な出世をなしとげているんだ。もう少し具体的にいうと、仮りにだね、画家の場合、天才という評価を得ると彼の絵はめちゃめちゃに売れる。世間にもその名が喧伝される。しかしねえ、彼自身は俗世とは完全に断ち切った生活をしているわけだ。ただ、彼のあずかり知らん世界で、その絵が売れているに過ぎん。これが本当の天才なんでね。 凡夫の出世というのは、小佐野賢治的それよ。これだってあんた、やっぱり出世にはちがいないんだ。だから俗物的出世を目指すか、精神的な高級な出世を目指すか、ふたつにひとつの道を選んだ方がいい。例え俗物的出世でも本人が満足しておれば、これは出世にはちがいないんだからね。

息子や若い読者には、柴錬の云う〝高級な出世〟を目指して欲しいと、心から願っている。
学生時代(倍賞千恵子)
【おまけ1】 BS朝日「ザ・インタビュー」 先週の土曜日、カルメン・マキが登場していた。自由奔放な彼女の生き様が亀さんは好きだ。
時には母のない子のように(カルメン・マキ)
【おまけ2】 BS-TBS「日曜特番」 「瀬戸内寂聴×沢尻エリカ 麗しの京都巡礼~愛に生きた女たち~」という特集の放送があった。瀬戸内寂聴もカルメン・マキ同様、自由奔放な人生を送ってきた女(ひと)である。また、かつて〝生意気だ〟と、マスコミに叩かれた沢尻エリカだが、今回の放送で彼女を見直した。特に、「人生は一度きり」と言い切ったあたりに、瀬戸内寂聴との出会いを通じて達した、覚悟のほどを見た。

 浄瑠璃寺の吉祥天女像と沢尻エリカ
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