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人生は冥土までの暇潰し

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人生は冥土までの暇潰し
亀さんは政治や歴史を主テーマにしたブログを開設しているんだけど、面白くないのか読んでくれる地元の親戚や知人はゼロ。そこで、身近な話題を主テーマに、熊さん八っつぁん的なブログを開設してみた…。
其の逝く処を知らず
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時折、拙ブログにコメントを送って寄こすYさん、拙旧稿「阿片王 満州の夜と霧」を読み、「里見甫という人物に惹かれていく自分がいました」と書く亀さんに、大変驚いたという内容のコメントをくれた。そのYさん、「下劣で姑息で卑怯な人物」と、亀さんとは全く逆の里見甫評なのである。加えて、「この男(里見甫)はアヘンで巨万の富を築き上げたばかりか、戦争者の手羽先として動き人殺しの手伝いをした大悪党だと言っても過言ではない」と、Yさんは断言してはばからなかった。

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満州の「阿片王」里見甫

そのようにYさんが思う気持ち、分からないでもない。確かに中国大陸の阿片を取り仕切り、大勢の中国人を阿片中毒者にした所業、決して許されるものではない。だが、阿片の本当の黒幕は関東軍、すなわち泣く子も黙る大日本帝国陸軍であったことに思いを致すべきで、また、里見甫か本当に「下劣で姑息で卑怯な人物」であるかどうかといった判断を下す前に、少なくとも佐野眞一の『阿片王』には目を通すべきである。同書は450ページにも及ぶ浩瀚な本だが、幸い初めて同書に目を通した11年前、主観的に重要と判断した箇所に線を引いておいたので、その中から里見の人柄について述べた行、ならびに里見が戦後の日本に残した、〝置き土産〟について述べた行を以下に列記しておこう。

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阿片を吸引する満州の中毒者たち(毎日新聞社提供)

最初に、以下は『阿片王』の腰巻き(裏表紙)で、同書の内容を的確に表している。

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次に、、満州には、「戦後」の核心が眠っているの一例として、電通と同盟(共同通信・時事通信)を以下に示しておこう。

その後、電通と同盟の間で、電通は通信とニュース写真に関する事業を同盟通信社に委譲する、電通は広告専業会社となり、同盟の広告部門を引き継ぐといった内容を主旨とする契約が取りかわされた。
戦後、同盟は共同通信と時事通信に分割された。一方、広告専門会社となった電通には里見の息がかかった元国通の社員たちが戦後、大挙して入社し、今日の電通の隆盛を築く礎となった。国通を立ち上げた里見は、現在の日本のメディア体制の基本的枠組みを満州でつくったともいえる。
「阿片王」といわれた里見の業績は、アヘン販売による独占的利益を関東軍や特務機関の機密費として上納する隠れたシステムをつくりあげた点に目が向けられがちである。だが、現在への影響力でいうなら、それよりもむしろ、今日の共同通信と電通を発足させる引き金となった国通設立に尽力したことがあげられる。
見逃してならないのは、ここにも、満州の地下茎が戦後日本に延び、その上に現在の日本の通信、広告の帰趨をなす陣容のプロトタイプが築かれたことが瞥見できることである。
里見遺児の〝芳名帳〟には、国通設立の過程で里見が知遇を得た鈴木貞一、古野伊之助、松井太久郎といった男たちの名前が登場する。
そしてその人脈は、里見が満州の中枢部に食い込むに従って、やはり〝芳名帳〟に名を連ねる岸信介、難波経一(満州国禁煙総局長)、古海忠之(満州国総務庁次長)などのエリート官僚から、阿片工作に密接にからむことになる楠本実隆、塩沢清宣、岡田酉次、岡田芳政らの軍人に、不気味な翼を伸ばしていくことになった。

『阿片王』p.118~119


また、里見甫その人について述べた行を、幾つか紹介しておこう。以下を読めば、なぜ亀さんが里見という人物に惹かれたのかが分かるはずだ。これは、亀さんが山口組の司忍組長を、任侠を解する人物として評価する理由と相通じるものがある。

他人にすべて罪をなすりつけて口をぬぐう田中隆吉の節操のなさや、自分を大きく見せることだけに躍起となる児玉誉士夫の小物ぶりとは対照的に、自分の知っている範囲のことはすべて答えるが、知らないことは知らないときっぱり断る里見の答弁は、男らしくてほれぼれする。
『阿片王』p.256


A級戦犯の大部分は、位人臣をきわめた連中だったが、残飯を争って貰うようなあさましい人間ばかりであった。その点里見は極めて小食で、そういうことはまったくなかった。同房の牧野(伸顕)内大臣が人を推し退けて残飯をあさっていたことを、里見が嗤いながら恬淡として語っていたことを覚えている。
『阿片王』p.264


そういえば、確かロッキード事件のときだったと思いますが、義父に児玉誉士夫について訊いたことがあります。それ以前に里見さんの名前を聞いたことがあったので、「児玉さんというのは里見さんみたいな人なんですか?」って尋ねてみたんです。すると義父の顔色がさっとかわって、不機嫌な声でこう言うんです。
「児玉なんかと人間性がまるで違う。一緒にしてもらったら困る!」
返ってきたのはその一言だけでした。それ以上尋ねたら怒られそうな雰囲気でしたから、私もそれ以上は訊けませんでした。

『阿片王』p.278


里見さんについては、父から「私欲のない人だった」と聞いてます。たしか、テレビに笹川良一が出演していたとき、父は「笹川と里見はまったく違う。里見は私欲のために動かなかったが、笹川は私欲で動いて財産を築いた。里見はもしカネに困っていたら笹川のところへ行けばいくらでももらえる立場の人なのに、そういうことは一切しない人だった」と言っていました。
『阿片王』p.278~279


最後に、岸信介や里見甫が東京裁判で何故に極刑にならなかったのか、その理由が朧気ながらも分かるのが以下の行である。英国と中国については、明日以降にでも以下のブログ記事と関連させて述べたいと思う。
人民元を軸とする「英国・中国」連合による英連邦王国の復活

里見が起訴されなかった背景には、おそらく、当時の国際政治状況から派生したパワーポリティックスの力学も複雑にからんでいる。里見自身が被告となって極東国際軍事裁判で裁かれることになれば、その過程で、〝戦勝国〟中国のアヘンとの深い関わりが必然的に出てくる。ことは容易に想像できる。そうなれば、蒋介石政権も無傷では済まなくなる。蒋介石が率いる国民党軍の資金の少なからぬ部分が、アヘンによってまかなわれていたことは、いわば公然の秘密だった。
『阿片王』p.259


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晩年に生まれた長男と

【参考サイト】
満州の妖怪  と その末裔  安倍一族  巻の2
きけ 伊丹万作 の こえ
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[2016/07/19 05:41] | # [ 編集 ]


やはり、満州国の弔いをしないことが今の日本をつくったのだと思います。
[2016/07/24 21:56] URL | ひろいえ #- [ 編集 ]

ひろいえさん、おひさ
御意。そのあたり、本稿で紹介の『阿片王』のp.118~119に凝縮されています。尤も、読者からはさしたる反応がありませんでした(爆)。よく読めば、英国病ならぬ日本病の元凶が、満州にあったことを明示した行なのにねぇ…。
[2016/07/25 03:30] URL | 亀さん #FlJCcfGk [ 編集 ]

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[2016/08/02 20:57] | # [ 編集 ]

情報多謝
佐野眞一が新著『唐牛伝』を出版したとの由、知りませんでした。情報ありがとうございました。
[2016/08/03 02:38] URL | 亀さん #FlJCcfGk [ 編集 ]


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