今稿では「独立のすすめ」と題して、独立開業について取り上げてみたいと思う。
独立家業を記事にしてみようと思い立ったのは、四年前に関西(京都)の大学を卒業し、就職のため関東(東京)に戻ってきた上の息子が、数週間ほど前に久方ぶりに帰省、せっかく新卒で就職した大手企業を、6月15日付けで辞めるという事後報告を受けた。その理由を尋ねると、会社の仕事を通じてコンサルタントにやり甲斐を見出し、プロのコンサルタントを目指すべく、コンサルティング会社に転職することにしたと言うのである。転職先の入社は来月の1日ということで、二週間ほどの浪人生活を送ることになる。その間、実家にも里帰りして一泊し、酒を酌み交わしながら親爺と語り合いたいと、実に嬉しいことを言ってくれた。
■人の一生 つらつら思うに、人生の先輩として今まで培ってきた体験や人生訓を、息子に伝えのも今回が最後という気がしている。それは、息子も昨秋結婚し、自分の家族のために当面は仕事に没頭せざるを得ず、四十代に突入するまでの向こう十数年間は、無我夢中の日々を送るであろうことは、自分の体験からも容易に想像できるからだ。そのあたりについては簡単に、「人の一生」と題した記事を残しているので、この機会に息子には同記事を一読して欲しいと思う。
■夏 人生で最も輝いている季節だろう。あたかも夏のヒマワリの如く、暑い夏を楽しんでいるかのようだ。年齢的には二十歳から四十歳の頃。「人生とは何ぞや」などと、振り返る余裕もなく、只、ひたすら仕事や家庭に没頭する季節だ。夏は、草刈り、塩撒き、乳酸菌液撒き、土の鋤きなど、秋の収穫に向け、汗水垂らして一所懸命に働く季節なのである。
 『草木の本』 ヒマワリ p.86
一方、小生は二年後の2023年には古希を迎えるが、一年ほど前から身体の衰えを感じるようになり、息子との世代交代が迫ってきたのを強く感じている。だから、今回の息子との語り合いが、親爺として体験談や人生訓を語る、最後の機会になりそうな気がするのだ。
つまり、息子も来月には28歳となり、もはや親に頼らずとも生きていける歳に到達したということだ。タレントのサヘル・ローズさんも自身が出演したテレビ番組で、「人が真に独り立ちするのは28歳前後」と語っていたが、小生も全く以て同感である。 施設で育った私
ともあれ、次回息子と再び人生や仕事についてじっくり語り合うとすれば、多分彼が四十代に突入した十数年後になるだろうし、その頃には小生も仕事は小遣い銭を稼ぐ程度で、ほぼ隠居という生活を送っていると思う。まぁ、「老いては子に従え」の好々爺になっているのではないだろうか。そうでないとしたら、今でも毎日のようにメールを下さる、ジャーナリストの渡邉正次郎さんのように、もしかしたら世直しに打ち込んでいるかもしれないが、先のことは今のところ皆目分からない。
■キャリアアップ 小生は転職するという息子の事後報告を聞いた時、心から嬉しく思ったものだ。何故なら、息子の取った転職の形こそ、キャリアアップの正道だと小生は思っているからである。
ここでキャリアアップという言葉だが、マイナビが「キャリアアップの意味とは?」と題する記事を掲載しており、キャリアアップについて以下のように定義していた。
「キャリアアップ」とは、特定の分野について今よりもさらに専門的な知識を身に付け、能力を向上させて、経歴を高めるということ
マイナビによる「キャリアアップ」の定義、狭義の意味では小生も肯定するものの、個人的に捉えている広義の「キャリアアップ」があるので、少しだけ付言しておきたい。それは、キャリアアップの最終目標の一つとして独立を目指す、すなわち将来における独立開業を目標にするのも一つの手だと思うのだ(無論、同一組織に留まり、社内での昇進を目指すという目標も考えられるし、人それぞれである)。以下、小生の考える理想的な独立開業までの道程だ。
大企業→中小企業→独立
つまり、大企業に在籍している間は、大企業固有の利点と欠点を身を以て知り、その間に己が目指すべき専門分野を絞っていき、ある程度自信がついた段階で中小企業に転職するのである。何故なら、中小企業の良いところは、自分の専門に関わる仕事を相当の範囲にわたり一任してもらえるという点にあり、それにより一層深く専門分野の「知識を身に付け、能力を向上させて、経歴を高める」ことができるからだ。そして、独り立ちできるレベルに達したと判断したら、後は思い切って独立開業の世界に飛び込めばよい。無論、息子が最終的に目指すコンサルティング業の分野によっては、仲間と一緒あるいは数名を雇い、自分の会社を興すという手も考えられよう。その場合は、当然ながら経営者としての手腕も必要となる。
なを、小生の「大企業→中小企業→独立」という考え方のベースにあるのが、藤原肇氏が著した『日本脱藩のすすめ』だ。以下、同書の「四〇代へのひと区切り」から引用した。
四〇代へのひと区切り 僕自身、三〇代の一〇年間は多国籍企業と呼ばれる巨大な石油会社で仕事をし、別の意味で人生を楽しんできましたが、大組織の持つ実力と限界の中でいろいろな体験をした結果、もはや名誉のためのビジネスや体面のためにもうからない仕事もやらなければいけないという大企業の体質に、いささかうんざりした気持になりました。
そこで新しい人生の節目である四〇歳を迎える四ヵ月ほど前に、機会があったので独立してコンサルタント業を始めました。この仕事はプロフェショナルとして、実に厳しい真剣勝負の世界で、それだけに勉強しなくてはならないのできついけど、自分に知識をインプットする上でやっておいた方がいいと判断したものや、こういう人と仕事をしておくと情報が得られると考えた場合、そういうことをやっておくのはコンサルタントとして財産作りの役目を果たします。だから二足のワラジをはいた生活をしていますが、僕のコンサルタント会社はカナダのカルガリーにあります。このカルガリーという町は世界第二位の情報センターなのです。世界第一はテキサスのヒューストン、第三は英国のロンドンであるというような情報については、日本人のほとんど誰も知りません。その辺に国際化が進んでいるとはいっても、日本がまだ本当の国際化の洗礼を終えていないという状況と、産業社会全体がソフトウエアを主体にした知識集約型への本格的な移行が始まっていない段階にある好例だと思うのです。
ここで、コンサルタントという言葉で思い出したのが石上進氏で、IBDという国際契約を専門とするコンサルティング会社の社長だ。石上氏とは20年以上に亘るお付き合いがあるだけではなく、石上社長は国際契約の分野において日本でも五指に入る方であり、コロナ禍が終わったら早速に連絡を取って息子に引き合わせ、コンサルタントとしての心構えといったものを、石上社長から学んで欲しいと思っている。
国際契約と言うからには、①国際契約の専門知識、②契約英語力、③国際交渉力の三つが必要になるのだが、残念ながら三拍子揃った国際契約のコンサルタントは,日本には数えるほどしか存在せず、そんな数少ないプロフェッショナルの一人が石上社長だ。 IBDの石上社長
小生が息子に独立のすすめを説くのは、二つの理由がある。一つは、拙稿「武士の時代 12」にも書いたように、これからの人類は情報大革命という大転換期を迎えるからだ。そして、来る新時代を形容するとすれば、「婆娑羅の時代」と形容できよう。
現在進行している情報大革命は、最早人間の力で止めることの出来ない、「人間中心」という言葉で代表される大きな流れなのだ。そして、「人間中心」という言葉から小生の脳裏に浮かんだのが「婆娑羅」(ばさら)であった。すなわち、従来の生き方(伝統的な思考・行動様式)には囚われない、まったく新しい生き方を貫ける人たちの時代が、間もなく到来しつつあるということである。
コンサルタントの大方がAIに仕事を奪われようとする中、石上社長の場合、来る情報大革命に備え、会社として生き延びていく対策を大分前から講じていたのを小生は知っている。その点、小生の生業である翻訳業にしても、近い将来において翻訳者としての仕事の多くがAIに奪われるはずだ。こうしたAI絡みの未来の職業を多角的な観点から検討するにあたり、一度アクセスして欲しいのが「My News Japan」というサイトで、同サイトの右列に並べられている書籍に注目していただきたい。そして、関心のある書籍があれば一度手にとって一読するのもよいかもしれない。

もう一点、小生が独立開業をすすめる理由は、未だにお上の言うことを盲信している(鵜呑みにする)人たちが大半であり、これでは身を滅ぼしかねないと危惧するからだ。そのあたりを理解していただく意味で、武田邦彦氏の以下の動画を観て欲しい。
【武田邦彦】※衝撃※ 60歳以上の人は今すぐにこの動画を見て“真実”を知ってください
要するに、60歳以上の人を対象に武田氏は、以下の“真実”を訴えているのだ。
1.定年・・・定年(60歳)が意味するのは、会社を辞めなければならないだけではなく、他の会社にも再就職できないということ。 2.年金・・・今の働き世代は定年(60歳)を迎えても、納めた金額に見合うだけの年金が支給されることはない。 3.血圧・・・国が高血圧の基準を130に下げたため、アルツハイマー患者が多発するようになった。 4.希望・・・今の世の中は老人から「希望」を奪っている。しかし、本来は希望を持つべきなのが老人だ。
上記1~4の具体的な内容は動画で確認していただくとして、本稿では「1.定年」についてもう少し敷衍しておこう。
手に職を持てば、定年を迎えて会社を去った後、独立開業して自分の腕一本で仕事を続けることで、年金に頼らなくても済むだけの収入が得られるだけではなく、世の中との繋がりや社会貢献にもなるのだ。だから、年金だけに頼よらざるをえない、生活のために働き続けなければならないという生活よりは、手に職を持てば年金に頼ることなく生活していくことも可能であり、精神的に安定した日々を送ることができるはずだ。
幸い、小生の場合は翻訳という技術を二十年に亘って身につけたお陰で、コロナ禍も一段落した欧米からは、少しずつではあるものの仕事の依頼が舞い込むようになった。将来的に今のコロナ禍がどうなるかは分からないものの、コロナ禍が終息すれば、時には海外を旅したり、国内はもとより世界各地の知人友人を訪ねたりする生活が送れそうだ。
それには何よりも健康であることが第一条件となる。理想としては、死ぬ前日も仕事をし、翌朝は眠るようにあの世に旅立つのが小生にとっての理想だ。死ぬ前日まで働く・・。このあたりに、日本人の持つ仕事観が垣間見えるような気がする。
最後に、拙稿「量子コンピュータの世界」でも引用した、以下の言葉を再掲しておこう。
この秋は雨か嵐か知らねども今日のつとめの田草とるなり
 里山から里海へ、そして人へ(故郷の田んぼで米づくりに取り組む)
【追加情報】
金融庁がついに宣言!「老後は自分で何とかしろ!」
[コメント]〝独立〟は決して他人事ではなく、己自身の身を守るために不可欠な「戦術」だ。では、どのような戦術があるのか? そのあたりを具体的に検討する際にヒントになり得る動画だ。
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