3月3日に発売予定の響堂雪乃氏の新著、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ 』(白馬社)が、一足先に昨日届いた。同書を謹呈して戴いた響堂氏には、心より御礼を申し上げる次第である。 ちなみに、ここ数日にわたって仕事の締め切りに追われていた身だったが、同書が到着したので急ぎ残り数件の仕事を早めに片づけ、先ほど同書に早速目を通してみた。一読して、日本の十代あるいは二十代の若者には是非読んで欲しい本だと思ったし、同書を手にするかどうかで、その人の人生が大きく左右されるだろうと、直感的に思ったほどである。 最初に、響堂氏の書き出しに注目されたい。これから君たちはニホンという国ができて以来、最も苛酷な時代を生きなくてはならないのだ。 p.5
有史以来の〝最も苛酷な時代〟と言ったのは、何も響堂氏だけではない。あの瀬戸内寂聴も、今の時代は戦中よりも酷いと述べていたことは、拙稿「戦争中より悪い時代 瀬戸内寂聴 」に書いた通りである。 一方、響堂氏は戦中どころか、有史以来「最も苛酷な時代」と、表現しているのにはハッとする。何故に〝有史以来〟最も苛酷な時代だと言えるのか? そのあたりは、読者自ら同書にあたって確認していただくとして、ここで伝えておかなければならないのは、響堂氏が同書を著した狙いである。響堂氏は以下のように書いた。かくして本書は、若い君たちがこのような時代を生き抜くための指標とすべく書き下ろしたものである。 p.6
同書の最大の特徴は、201項目もの高邁な学説を取り上げ、しかも一つ一つの学説を抽出し、概説という形で纏め上げたという点にある。こうした高度な学術用語を駆使しているので、特に若い人たちが通読する上で、かなり骨が折れるのではと思うのだが、未だ若いのだし、持ち時間はタップリとあるのだ。じっくりと腰を据えて、読み進めていくと良いだろう。なお、201の概説は大まかに七つの章で構成されている。第1章 「政治」が無いことを知ろう 第2章 地球から「国」が消える仕組み 第3章 新聞テレビは知能を破壊する 第4章 学校で人間は機械になる 第5章 これからニホンで起きること 第6章 なぜ大人は何も考えないのか 第7章 これから君たちが考えなくてはならないこと
第1章から6章にかけての章は、ニホンの現実を多角的に述べた章だが、最終章の第7章「これから君たちが考えなくてはならないこと」は、文字通り十代から二十代の若者に向けた響堂氏の指南である故、じっくりと時間をかけて熟読して欲しいと思う。参考までに、同章は20の概説で構成されていたが、個人的に深く共鳴したのが「深い処理 」であった。読書しなけれぱ人間になれない グーテンベルクの活版印刷によって、支配者の特権であった読書が大衆のものになりました。それまでの大衆は動物と同じように注意散漫で、ひとつのものに意識を集中させるという経験すら持ちませんでした。つまり我々の祖先は活字のもたらす語彙や観念という知的振動によって人間になったのです。しかしスマホやネットはそれを代理できないどころか、真逆に軽薄で無思考な人間を大量生産しているのです。このように読書によってのみ獲得できる分析や、批判や、内省や、洞察などの営為を「深い処理 」と言います。 p.214
また、十代の頃に三年間近く世界を放浪した身として、「トランスナショナリズム 」(p.229)も大変良かったと思っている。どのようなことが書かれているかは、読者自ら確認していただとして、内容的には拙稿「和僑 」を彷彿させるものがあった。 最後に、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ 』を読み、佳い一日になりそうだと思っていた矢先、新井信介氏の以下の記事を読み、新井氏のノーテンキぶりには呆れたことだった。新井氏ほどの知識人なら、産経新聞のバックはネオコンであることは分かっているはずなんだが…。かつ、言論人としての矜持を持っているのであれば、あのようなネオコン新聞の取材なんぞ、キッパリと断るべきであった。http://www.k2o.co.jp/blog4/2017/02/1.php
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