NHKで4月12日(土)に放送された、「いま 集団的自衛権を考える」という番組を録画しておいたのだが、昨日に至って漸く観ることができた。肯定側2名、否定側2名に別れた討論形式の番組だったのだが、肯定側の一人に磯崎洋輔首相補佐官の名前を見て、おやおやと思った。というのは、今月発売の『月刊日本』6月号に、「再び、磯崎陽輔首相補佐官を批判する」と題した記事で、青木理氏が磯崎氏のことを徹底的に批判していたからである。
この程度の人物(磯崎氏のこと)が政権の中枢にのさばり、国のかたちを根本から変える作業に従事していることは、安倍「唐様」政治の象徴に思えて仕方がないのである。 『月刊日本』6月号p.97
青木氏の言うことだから、本当なのだろうと思いつつ番組を見始めたのだが、なるほど、どうしようもない人物だった。
一例として、日本人輸送中の米艦防護がある。仮にお隣の韓国で動乱が発生した場合、韓国に残された日本人を米艦に乗せて日本に向かっている途中、米艦がA国やB国の攻撃に晒された…。そこで、「今の憲法下では海上自衛隊が艦船を派遣して、攻撃されている米艦と日本人を防護することができない。だから自衛権を見直すべきであり、そうすることで米艦と乗船している日本人を守ることができ、メデタシメデタシ…」というのが磯崎氏の話である。それに対して否定側の中野晃一氏は、「自衛隊が米艦の防護に向かい、自衛隊の艦船に守られながら、米艦も日本人も無事に日本に入港、メデタシメデタシ…という単純な話で終わるわけがない。攻撃してきた側からみれば、防護にきた日本の艦船が敵として参戦してきたと受け止めるのが普通である。決してそこで終わりではなく、始まりなのだ」、と中野氏は諭すように磯崎氏に話しかけたものの、磯崎氏は中野の疑念に答えるどころか、とんちんかんな回答をしているのである。(番組の27分27秒あたり)

もう一人の肯定側の出席者は北岡伸一氏である。昔、ディベート道を提唱した松本道弘の後継者のような形で、一時はディベートを熱心に提唱していたのを思い出すのだが、その後は同氏のことをすっかり忘れていた。しかし、最近になって安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で、座長代理を勤めていることを知った。そこでテレビで同氏の話に耳を傾けてみたのだが、流石はディベートで鍛えただけあって、立て板に水、論理的にも筋が通っているように少なくとも見えた。だが、その話し方に、顔の表情に、何故か亀さんの心に響くものが無い。もう少し同氏の発言を追ってみないことには何とも言えないが、少なくとも亀さんから見て北岡氏は心から信じられるようなタイプの人間ではない。
一方、否定側の柳沢協二氏(元内閣官房副長官補)と上智大学教授の中野晃一氏は、安倍総理のようなお坊ちゃんと違って、人の気持ちを理解できる人たちであることが直感的に亀さんには分かった。
それにしても改めて思ったことだが、テレビというのは恐ろしい電気箱だ。その人物の人となりが、本人は隠しているつもりでも、そのまま映し出されてしまうのだから…。
なお、現在発売中の『月刊日本』(6月号)は上記の青木理氏の記事だけでなく、森田実、平野貞夫、小林節といった各氏の貴重な集団的自衛権の記事が掲載されている。こうした時代だからこそ、同誌を手に取って集団的自衛権について考えて欲しいと思う。


【訂正】 上記番組を4月12日放送の「いま集団的自衛権を考える」として取り上げましたが、正しくは1ヶ月後に放送された5月16日放送の「集団的自衛権を問う」でした。お詫びするとともに、ここに訂正させて頂きます。
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