昨夜は「証言12 吉田茂を見張れ」を読んだ。その理由は、「証言 陸軍中野学校 1」でも書いた通り、「吉田茂を徹底的に叩いていた孫崎享氏の『戦後史の正体』、その孫崎氏の吉田茂観に対して反論をブログで唱えていた山崎行太郎氏の吉田茂観との間に横たわる〝溝〟」について、見直してみたいと思ったからだ。
亀さんは孫崎氏の『戦後史の正体』を入手して読んでいるし、山崎行太郎氏のブログは以前から注目してきた。しかし、本業(翻訳)で忙しい日々のため、『戦後史の正体』の場合は第四章「保守合同と安保改定」の僅か30ページしか読んでいないし、山崎氏の孫崎批判は一通り目を通しだけにすぎないので、どちらかの吉田観に軍配を上げるというまでには至っていない。
ただ、亀さんが両氏から受けた印象は以下の通りだ。
最初に孫崎氏の場合、岸信介を高く評価している一方で、吉田茂を低く評価しているという点だ。以下は、孫崎氏が吉野俊彦氏の著書を引用する形で、岸信介を評価する一方で吉田茂を評価していないことがよく分かる行なので、敢えて引用しておこう。
吉野俊彦著『岸信介政権と高度成長』(東洋経済新報社)は、岸自身の証言とほぼ同じ内容を述べています。 「岸さんは経済のエキスパートなのですけれども、彼は吉田茂さんの結んだあの講和条約のままでは日本民族の恥さらしだと考え、安保をもっと自主性のあるものに改定する。そのためには再軍備も必要で、憲法も改定にまでもっていかなくてはならないという考えをもっていた。あわせて沖縄の返還を実現したい。おそらくそこに「最大の」エネルギーを注いだのでしょうね。経済の方には直接あまり口をださないようにしていたのではないだろうかという感じを私はもっています」 どうでしょうか。私たちがこれまでもっていた岸首相の像と相当異なっていませんか。岸首相は対米従属路線からの脱却をはかっています。不平等な旧安保条約の改訂をするため、全力で奮闘していたのです。 『戦後史の正体』p.187
そうした孫崎氏の姿勢に対して、山崎行太郎氏は徹底的に批判しているわけだが、同氏のブログに多少は納得できる点もあるものの、どことなく同氏の孫崎攻撃はしっくり来ない。それは、明日発売される世界戦略情報誌『みち』で、藤原源太郎さんがいみじくも述べていた以下の視点が欠けているからだ。
プーチンはスノーデン事件を仕掛けたのが英国情報機関であることを見抜いている。英国筋の仕掛けの背景には、米国の国権支配を巡るアングロ系対ユダヤ系の熾烈な文明内戦でユダヤ系を追い込もうとする思惑がある。英国筋は旧ネオコン勢力を封じ込めるため、スノーデン事件を仕組んだのである。 世界戦略情報誌『みち』8月1日号 p.6
ともあれ、藤原源太郎さんんの記事を読んだ上で、再び吉田茂という人物を見直せば、吉田の影に白州次郎、すなわち英国の影が浮かんでくる。そのあたりから吉田茂を見直さない限り、明確な吉田茂像は浮かばないような気がする。

大分脱線してしまったが、「証言12 吉田茂を見張れ」に登場する、吉田茂の動向をスパイしていた富田四郎氏(陸軍中野学校第六期生)の証言を読むことで、今まで以上に明確な吉田茂像を構築できるのではと、ふと思った。
その他、同証言で亀さんが衝撃を受けたのは以下の行だった。
三笠宮殿下が、お忍びで学校を視察に来られたんです。 『証言 陸軍中野学校』p.146
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